「洋服の青山」、400人希望退職の衝撃! 窮地のスーツ業界が生き残るには:小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)
「洋服の青山」で有名な青山商事が、400人の希望退職を募集すると発表した。コロナ禍によるスーツ離れもあり、窮地のスーツ業界。生き残るためにはどうしていけばよいのか。
他業種をうまく取り込んだ業務スーパー
神戸物産が運営する業務スーパーは、小規模、零細飲食店の業務用仕入需要に対応するスーパーというコンセプトながら、実態は地元住民のディスカウントストア需要を取り込んで成長している。基本的にFCチェーンとして構成されており、主に地方の家電量販店、ホームセンター、食品スーパーなどが不採算店を転換する形で加盟している。コロナ禍の今、これらの業態は巣ごもり需要の追い風で、不採算店はあまり出ないかもしれないが、紳士服も含めて不採算店の大量発生が見込まれる、外食業の中からの転換組も加盟店に加わることになるのかもしれない。
コロナ禍という天災に見舞われたことで、さまざまな業種、業態で多くの閉店が発生することになるかもしれないが、それは単なる悲劇で終わるとは限らない。歴史にならうなら、こうした事態をチャンスとして、不採算店の受け皿となって成長する企業もあるだろうし、新事業を立ち上げたり、事業内容自体を変えて生き残る組織も多いはずだ。
ウィズコロナは急激かつ一過性の環境変化であるため、これに完全対応しても、何年かすればもうゲームチェンジしている可能性もある。しかし、スーツ需要の急減は既定路線の前倒しであり、紳士服チェーンのスーツ脱却への対応は、決して損にはならないだろう。素早くシェアオフィス事業を準備したAOKIや青山商事は、数年後にはシェアオフィス業界の大手といわれる存在になっているかもしれない。
コロナ禍でひどい目にあっている組織は多々あろうが、これからはアフターコロナに向けた布石について、各社が必死の生き残り策を発表することだろう。2月は多くの小売関連企業の決算月であるのだが、4月以降の決算説明で明らかになる新たな挑戦的施策に大いに期待したい。
関連記事
- 「洋服の青山」が自前でつくったシェアオフィス スーツ店が“仕事場”を提供する意味
「洋服の青山」を展開する青山商事がシェアオフィス事業に参入、1号店をオープンした。“仕事着”だけでなく、新たな“仕事場”を提供していくという。新規事業立ち上げの狙いと、自社で一から開発した施設の特徴について聞いた。 - 「国道16号」を越えられるか 首都圏スーパーの“双璧”ヤオコーとオーケー、本丸を巡る戦いの行方
コロナ禍で人口流出が話題となる首都圏だが、「国道16号線」を軸に見てみると明暗が大きく分かれそうだ。スーパー業界も16号を境に勢力図が大きく変わる。そんな首都圏のスーパー業界勢力図を、今回は解説する。 - 巷で“スーツ離れ”が起きているのに、なぜビジネスリュックは好調なのか
テレワークを実施する企業が増えたので、オフィスに足を運ぶ人が減った。となると、スーツを着ることが少なくなり、革靴を履かなくなり、カバンも不要になり……。などと想像してしまうが、ビジネスリュックは好調に売れているという。その背景に迫ってみたところ……。 - 「国道16号」を越えられるか 首都圏スーパーの“双璧”ヤオコーとオーケー、本丸を巡る戦いの行方
コロナ禍で人口流出が話題となる首都圏だが、「国道16号線」を軸に見てみると明暗が大きく分かれそうだ。スーパー業界も16号を境に勢力図が大きく変わる。そんな首都圏のスーパー業界勢力図を、今回は解説する。 - スーツに見える作業着は、なぜ3倍ペースで売れているのか
スーツに見える作業着をご存じだろうか。2018年、水道工事を行っている会社が発売したところ、売れに売れているのだ。多くのアパレルが苦戦している中、なぜこの商品はヒットしているのか。グループ会社の社長に話を聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.