社員120人が原則テレワーク、「在宅勤務を語ろうチャット」で不安解消 ピクスタ流の働き方:オフィスを縮小移転(2/2 ページ)
原則在宅勤務とするフルテレワークを導入し、オフィスも縮小移転したピクスタ。そうした中、どのようにコミュニケーションを活性化しているのか。
一般には、始業時と就業時にタイムカードを切るなどしてタイムスタンプを押すものだが、ピクスタでは何度もタイムスタンプを押せる。例えば始業後、しばらくして子どもの世話をしなければならなくなったら休憩開始のタイムスタンプを押し、戻ってきたら休憩終了のタイムスタンプを押す。また、家事をしたい状況が生じたら休憩開始のタイムスタンプを、戻ってきたら再び休憩終了のタイムスタンプを押す──という具合だ。
こうなってくると、気になるのは時間の集計だ。同社は勤怠管理ツールとして「KING OF TIME」というクラウドシステムを使っている。社員側でも労働累計時間を閲覧できるため、あと何時間働けばよいかをわざわざ計算しなくて済む。同社では、時間単位での有給休暇を取得できるため、さらに時間計算が難しくなりそうだが、このシステムを使えばそうした手間も掛からないという。
近距離手当を廃止、代わりに毎月1万円のリモートワーク手当
テレワーク主体の働き方へ変更したことで、同社ではそれまで支給していた近距離手当を廃止した。これはオフィスから4.5キロ圏内に住む社員に対して、家賃補助として使ってもらうよう支給していたものだ。
代わりに、オフィスが提供するはずだった仕事しやすい環境を整備するため、20年の春先と夏に臨時手当を、また現在では毎月1万円のリモートワーク手当を支給している。この額について、秋岡部長は「働きやすい環境整備に役立ててもらいたいというだけでなく、テレワークを進めていくんだ、という内外に向けた意思表示でもある」と話す。「インパクトのある金額ではあるが、多すぎるとは考えていない」という。
原則テレワークを認めたことで、オフィスの近くに住む必要もなくなった。そのため数人の社員は、東京23区から郊外へと転居したという。秋岡部長は「小田原や熱海、福岡に引っ越した社員もいます」と笑う。
採用面でも変化が生じた。全国から優秀な人材を集められるようになったのだ。「実験的ではあるが、20年春先からアルバイトも含め、10人弱ほどをオンラインで面接し、フルリモートで採用した。今までアプローチできなかった人を迎えられるのは大きなメリットだと感じている」と秋岡部長は話す。
3分の1の広さのオフィスに移転したことで、賃料や光熱費など毎月かかっていたコストも5割強削減できた。今後、旧オフィスと同様の環境、福利厚生を提供できるように、また社内コミュニケーションを加速させるために投資をしていきたいという。
フルテレワークという方針を決める前は、子育て中の、しかも一定の等級以上の立場にある社員にしか、テレワークを認めていなかったというピクスタ。業務そのものが「リモートでいける」と頭では分かっていても、踏み切るには覚悟がいったという。
「トラブルや不具合が出てくるに違いない、と考えていたが、いざ完全テレワークに振り切ってみたら、意外なほどあっさりと、スムーズに業務が回っていった。動くことで見えてくることがあると体験できた。
もし、あれこれ思い悩んでテレワークを導入できていないのであれば、週に3回、または2回でもいいので、全社でテレワークを実施してみるのはどうだろうか。試してみることで、オフィスワーク時とテレワーク時のアウトプットの量、仕事の中身の違いをフラットに比較できるし、解決すべき課題がクリアになると思う」(秋岡部長)
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