毎月30%増! オンライン版の音楽教室が、まだまだ伸びそうな理由:水曜インタビュー劇場(メロディ公演)(4/6 ページ)
オンラインの音楽教室に、生徒がじわじわ集まっていることをご存じだろうか。サービス名は「フォニム」。既存のリアル店舗ではなく、なぜネット上で演奏する人が増えているのだろうか。運営元の社長に話を聞いたところ……。
テキスト作成に奔走
土肥: フォニムは2020年7月にスタートしたわけですが、これまでどんな苦労がありましたか?
宍戸: 音楽教室というのは特殊な業界でして、例えば、英会話であればカリキュラムがありますよね。「最初にこれを学んで、次はこれで」と明確に決まっているので、それをオンライン化する場合、プラットフォームにのせればいい。しかし、音楽教室は違う。教え方は“伝統芸能”に近い部分があって、例えば「先生が弾いている姿を真似してくださいね」といった抽象的な表現が多いんですよね。
土肥: ワタシは音楽教室に通ったことがないのですが、テキストはありますよね。テキストがあるのに、きちんとしたカリキュラムがないというのはどういう意味でしょうか?
宍戸: カリキュラムが決まっていないので、講師が「今日はこれをやりましょうか」と決める。しかし、講師の教え方には差があるので、生徒側からすると「何度やってもうまくいかないなあ」「先日も同じことをやった。また、やらせるのか」と感じてしまう。つまり、全国の教室で、いわば“アドリブ”のような形で教えている。こうした状況なので、英会話教室のように、決められたカリキュラムをプラットフォームにのせるといった作業ができません。
既存の音楽教室はアドリブのような形で授業が進められているので、フォニムに参加していただいている講師の人に「カリキュラムを言語化していただけますか?」と依頼すると、びっくりされました。そもそもカリキュラムという概念がないので、テキストをイチからつくることにものすごく苦労しました。
リアル店舗は対面で教えているので、講師が「ちょっと間違ったかな?」と思っても、すぐにリカバリーできるんですよね。「あ、ごめんなさい、さっきのは間違いで、正しくは……」といった具合に、説明することができる。しかし、オンラインの場合、生徒さんが「あれ、それってどういう意味だろう? よく分からない」となれば、静かに離脱する。解約のボタンを押されてしまうと、それで終わってしまうので、非常にシビアな世界なんです。
土肥: 解約されないために、どんな工夫をしているのでしょうか?
宍戸: データをものすごく分析しています。「この回のこの部分で、生徒さんの反応がおかしい」となれば、それを講師にフィードバックしています。例えば、1→2→3→4→5と教えていて、多くの生徒さんが3でつまづいていて、4は問題なければ、1→2→4→3→5といった具合に、教える順番を変えています。また、生徒さんには宿題の提出をお願いしていて、当社にとってはそれが“宝”になっているんですよね。
土肥: 宝? どういう意味でしょうか?
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