「御三家」の帝国ホテル、建て替えの決断 リッツ・カールトンやハイアットにどう立ち向かう?:外資VS.日系の顧客獲得合戦(4/4 ページ)
帝国ホテルが、主力の「帝国ホテル 東京」(東京都千代田区)を建て替える方針を固めたとの報道があった。その理由として本館の老朽化と、外資系高級ホテルへの対抗があるという。日系ホテルは外資系にどう立ち向かえばいいのだろうか。
コロナ禍と内資ホテル
本稿ではコロナ禍とホテルについては言及してこなかったが、何よりコロナ禍の大打撃の中で目的型需要創出のアイデアといった新たな取り組みについては内資ホテルが際だった印象だ。また、コロナ禍の集客トライにおいても内資ホテルのポテンシャルの高さも目立った傾向も指摘できる。
無論、感染症対策という点はワールドワイドに重要なテーマということもあり、外資ホテルのスピード感ある取り組みには注目すべきものも多かった。ただ、各国で異なるセンシティブな感染症対策というシーンにおいて、日本とそこに住む日本人に長くフィーチャーしてきたホテルの奮闘が目立ったのはある種当然といえば当然か。
既に述べたとおり、近年のインバウンド活況下において外資系ホテルの強さを見てきた業界であったが、国内の情勢に俊敏に呼応する内資ホテルの綿密さも大きく注目されることになった。
インバウンド消失という想定外の事態に見舞われたホテル業界であるが、回復までには数年を要するという声もある。故に国内に着目したデマンドジェネレーションを徹底できるのかは大きなテーマだ。海外からのゲストがこれでもかと押し寄せていたホテルも、外資内資問わずその実力があらわになる時を迎えている。「対前年比アップは当たり前」「業績を自慢するのはやぼ」とささやかれ、とにもかくにも訪日外国人旅行者の取り込みに注力してきた業界であったが、インバウンドに期待できなくなったいま“自らのホテルが生き残れるのか”といった目の前のリアルとホテルは今日も向き合う。
著者プロフィール
瀧澤信秋 (たきざわ のぶあき/ホテル評論家 旅行作家)
一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。
日本を代表するホテル評論家として利用者目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。その忌憚なきホテル評論には定評がある。評論対象は宿泊施設が提供するサービスという視座から、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、旅館、簡易宿所、レジャー(ラブ)ホテルなど多業態に渡る。テレビやラジオ、雑誌、新聞等メディアでの存在感も際立ち、膨大な宿泊経験という徹底した現場主義からの知見にポジティブ情報ばかりではなく、課題や問題点も指摘できる日本唯一のホテル評論家としてメディアからの信頼は厚い。
著書に「365日365ホテル」(マガジンハウス)、「最強のホテル100」(イースト・プレス)、「辛口評論家、星野リゾートへ泊まってみた」(光文社新書)などがある。
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