外国人にも人気の「缶コーヒー」が、なぜ2017年から低迷しているのか:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
缶コーヒーの売り上げが低迷している。「カフェが増えたから」「コンビニコーヒーが伸びているから」といった理由を想像したかもしれないが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。どういうことかというと……。
外国人が日本にやって来て、その高い品質に驚くモノの一つに「缶コーヒー」がある。ネットやSNSには、日本の缶コーヒーを味わった外国人からこんな称賛の声があふれているのだ。
「なにこれ? 期待しないで飲んだんだけど、めちゃくちゃうまい」「自分の国にある缶コーヒーとまったく違う、レベルが高すぎる」
なぜこんなにも日本の缶コーヒーがうまいのかというと、品質に徹底的にこだわる日本人の「職人気質」が関係しているかもしれないが、実は「1億人という巨大な国内市場の中で切磋琢磨した」ことも大きい。
日本の缶コーヒーの歴史は長く、パイオニア的な存在と言ってもいい。商品のアイデア自体は既に戦前の米国に存在しており、米コカ・コーラ社などでも開発が進められていたようだが、実際に販売されることはなかったという。それに対して、日本は戦後の高度経済成長期に入ってから、かなり積極的に商品化に取り組んでいたのだ。
『ザ・飲みモノ大百科』(著・串間努 /久須美雅士、扶桑社)によれば、『日本食糧新聞』で「1959年1月に外山食品が『ダイヤモンド缶入りコーヒー』の発売を予定」という記事が掲載されており、65年には、日本橋の三越本店が砂糖入りの缶コーヒー「ミラコーヒー」を発売。
さらに、69年になると、上島珈琲本社(現UCC上島珈琲)の創業者・上島忠雄氏が、駅のミルクスタンドで飲んだ瓶入りのコーヒー牛乳から着想を得て、「UCCコーヒー ミルク入り」を発売。これは「世界初のミルク入り缶コーヒー」として注目を集め、翌年の大阪万博で一気に知名度が広まった。これをきっかけに他社も缶コーヒー市場へ続々と参入し、し烈な開発競争がスタートした。
70年、日本の人口はベビーブームもあって1億人を突破。このような巨大国内市場の中で、缶コーヒーメーカーが群雄割拠して、半世紀にわたって「低価格・高品質」の競争を繰り広げれば、「え? たった100円でこんなにうまいの?」と外国人が驚愕(きょうがく)する缶コーヒーができ上がるのは自明の理だろう。ちなみに、この構造は、同じ時期から国内市場でし烈な開発競争がなされて、やがて海外市場で「低価格・高品質」が高く評価されていく自動車や家電もまったく同じだ。
関連記事
- 退職金4000万円上乗せ! パナの「50代狙い撃ちリストラ」は“正解”なのか
パナソニックが「50代社員」を対象に、大規模なリストラに踏み切る――。ダイヤモンド編集部が同社の内部資料を入手して報じたわけだが、“働かないおじさん”をターゲットにしたことは吉と出るのだろうか。長い目で見ると……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - 日本のアニメは海外で大人気なのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が米国でもヒットしている。このほかにも日本のアニメ・マンガは海外市場で勝負できているのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか。その背景に、構造的な問題があって……。 - 「緊急事態宣言下に通勤する人」を叩いても、テレワークが普及しない根本的な理由
緊急事態宣言が発令されたにもかかわらず、通勤列車を見ると、たくさんのビジネスパーソンが乗車している。テレワークを実施している企業が増えているはずなのに、なぜ会社で働く人がたくさんいるのか。コロナに対して危機感が乏しいわけでもなく、慣れているわけでもなく……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.