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「格差の是正」へ舵 経産省の“画期的”提言が「コロナ禍で生まれた希望」といえるワケ「緊縮財政」路線からの転換点(1/6 ページ)

長引くコロナ禍によって多くの人が疲弊するなか、一筋の希望の光ともいえるような変化があったことを共有したい。経済産業省が「経済産業政策の新機軸」という資料を発表した。これまでは経産省といえば、グローバル化や構造改革を推進してきた印象を持つが、今回の提唱内容は今までの戦略とは一線を画す内容となっている。

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 東京都を含む9都道府県に発出されていた緊急事態宣言が6月20日に解除された。一部地域は引き続きまん延防止等重点措置の対象となるものの、足元では先進各国に比べて遅れていたワクチン接種も急速に進んでいて、秋頃には日常が戻ってくると期待する向きも多い。

 しかし、ワクチン接種が進んでいた英国ではインド株の流行によりロックダウンの解除が1カ月延長されている。ワクチン接種が進めど先行きは依然として不透明のままだ。今回は長引くコロナ禍によって多くの人が疲弊するなか、一筋の希望の光ともいえるような変化があったことを共有したい。

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コロナ禍における一筋の希望の光とは?(写真提供:ゲッティイメージズ)

コロナ禍は分断を加速させた

 筆者は多くの資料やレポートを作成している。そのため国や企業が発表するデータを分析して仮説をたてたうえで実地調査をし、仮説を検証するサイクルをくりかえしている。そのなかで、コロナ禍は通常の不況とは違うと感じる点がいくつかある。中でも最大の違いを一言で表せば「バラバラ」ということだ。

 例えば、日本銀行が発表している全国企業短期経済観測調査のデータを見てみよう。大企業に収益を中心とした業況について全般的な判断を尋ね、「良い」という回答から「悪い」という回答を差し引いて算出する「業況判断DI」を業種別に見てみると、コロナ禍で社会のオンライン化が進んだことが追い風となった情報サービス業では、DIがプラスを維持している。

 また、2020年春頃は自動車市場での急激な需要減退や、サプライチェーンへの影響による部品調達の遅れなどから、国内自動車メーカー各社が国内工場で生産調整を実施した関係で、自動車業のDIは20年前半に大きくマイナスとなっていた。

 だが、今回は海外経済の持ち直しを背景にプラス圏へ戻ってきている。一方で、外出自粛や時短営業の影響を受けるため、対個人サービス業や宿泊・飲食サービス業は依然として厳しい状況が続く。まさに業種ごとで業況判断はバラバラなのだ。

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日本銀行「全国企業短期経済観測調査」のデータをもとに株式会社マネネが作成。(注) :21年2Qは予測値。

 もう少し身近な例を紹介しよう。厚生労働省が発表している毎月勤労統計調査で20年の冬のボーナスについて、業種別に前年比の変化率を見てみる。全体では前年比-2.6%と少し減少している一方、情報通信業にはほとんどボーナスの額に変化はない。一方で、生活関連サービス業や飲食サービス業等はボーナスが前年から2割近くも減少している。

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厚生労働省「毎月勤労統計調査」のデータをもとに株式会社マネネが作成。

 このように、コロナ禍では自身が所属する業種によって、その影響の大きさがバラバラになっている。コロナ禍のせいで生活もままならない人もいれば、自宅で仕事ができるようになってコロナ前よりも快適な生活を送れている人もいて、まさに“分断”が加速しているのだ。

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