超狭い住宅に申し込み殺到! モノを持たない「ミレニアル世代」と「Z世代」がマーケティングを変える理由:価値観と消費行動を分析(3/4 ページ)
マーケティングでは「ミレニアル世代」と「Z世代」の存在を無視できない。価値観・消費行動にどのような特徴があるのか。超狭い住宅に好んで住む理由を分析していみると……。
なぜ狭い部屋を好むのか
そんなシンプル族に人気の、面白い不動産会社があります。「EARLY AGE」(アールエイジ、東京都港区)です。狭小型物件開発の元祖とも言える同社が扱うのは、狭いと10平米以下、四畳半程度の部屋です。そのようなマンションを、恵比寿、中目黒、代々木上原、神楽坂といった都内の人気エリアに次々と展開しています。
同物件には明確な特徴があります。一つは家賃です。例えば、代々木上原周辺は人気の居住エリアとなっており、駅徒歩4分で1R・1Kの物件だと、家賃の相場は12万〜13万円です。一方、同社の扱う物件は、相場より安価です。
もう一つの特徴がシンプルな部屋の作りです。一例ですが、小さな部屋の中には、バスとトイレ、洗面所と流し台を兼ねたシンクがあり、下に洗濯機がはめ込まれています。驚くほどコンパクトな間取りですが、どの物件も非常に人気があります。セカンドルームとしてではなく、本宅としての利用がほとんどです。
こんな狭い部屋で実際に暮らしていけるのかと不思議に思う人もいるでしょう。しかし、利用者はこの広さ、この機能で「十分」なのです。ミレニアルとZ世代にとっては、スマホさえあれば生きていけるからです。
お金がないから狭い部屋に住むワケではない
以前、同社のマンションに引っ越しをしてきた大手IT会社の30代女性管理職に話を聞いたことがあります。彼女は都心から少し離れたエリアから、中目黒の物件に引っ越してきたところでした。「このような小さな部屋で足りるのですか?」と私が聞くと、彼女はこう答えました。
「洋服は定期的にメルカリで買って、売ってまた買うを繰り返すので、タンスは必要ありません。だからその分のスペースがいらないのです。普段は仕事で忙しいので広い部屋は不要です。食事は周辺にある飲食店かコンビニで十分。だから冷蔵庫はなくてもいいし、キッチンもほとんど使いません。ムダを極力減らした部屋だから、私は気に入って引越してきたんです」
お金がないから小さい部屋に引っ越すという昔の大学生にありがちな「四畳半暮らし」ではありません。
お金も肩書も余裕もあるのですが、「モノを持たないシンプル族」だから小さな部屋がいいのです。部屋に冷蔵庫がなくても、コンビニでいい。立派な洗濯機がなくてもコインランドリーでいい。キッチンが小さくても外食でいい。部屋に仕事や勉強スペースがなくても、ネット環境のある近所のカフェでいい。友達を呼べるスペースがなくても外で会えばいい。これがこの世代のライフスタイルであり、だからこそアールエイジの物件が人気になるのです。
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