2015年7月27日以前の記事
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なぜIPO価格は安すぎるのか? スタートアップ経営者へのアドバイス(2/4 ページ)

8月、公正取引委員会が新規株式公開時に企業が適切に資金調達できているか調査を始めたことが話題を集めている。未上場企業が新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得してもらう「IPO」は、ベンチャー企業にとって一度きりの重要なイベントでもある。しかし、そこにはさまざまな問題点があると指摘されている。改めて、国内のIPOについて何が問題視されているのか、そして理想的なIPOとはどんなものななぜIPO価格は安すぎるのか?

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なぜ初値は適正価格がつかないのか

 では、なぜ適正な価格がつけられないのだろうか。日本の大企業は経営層の流動性が低く、スタートアップ企業でもシリアルアントレプレナー(連続起業家)が少ないという特徴がある。企業のCEOやCFOなどの経営陣にとってIPOは初めての経験となるケースが多く、証券会社や資本市場と折衝していかなければならない中で、企業側が経験不足というケースも多い。さらに、場合によってはIPOのプライシングを企業の経営陣に代わってリードすることも期待されるVC(ベンチャーキャピタル)などの既存株主にも、IPOに慣れているプロフェッショナル人材は多くない。

 一方で証券会社側からすると、IPO時の公募価格に対して初値が大きく上昇すれば、公募価格で買う投資家に対するサービスになるという側面もある。手数料を多く払ってくれている機関投資家や個人投資家に対して、IPOで優先的に申し込みを割り振ることで利益を得てもらい、高い手数料収入が得られるメリットがあり、構造的に企業側との思惑が反する可能性がある。

 日本では、公募時の時価総額と、株式市場で初めにつく初値の乖離率の平均値は、長期的に50%近い水準になっている。しかし、日本以外の先進国、G7各国では10〜20%にとどまっており、日本では特に高い割合となっていることが分かる。近年、日本における乖離率はさらに上がっており、19年は75%、20年は130%にまでいたっている。日本には小型IPOが多いので値動きが荒いという見方もあるが、例えば時価総額が500億円以上と比較的大型のIPO企業に絞っても、乖離率は他国に比べて著しく高い。初値が適正価格ではないという疑問が生じても不思議ではない。

 筆者自身は証券会社、上場企業のCFO、そして投資家というさまざまな立場を経験してきたが、その経験を踏まえて客観的に捉えてみても、事業会社がIPOを通じて得るリターンの少なさはやや不自然だと感じざるを得ない。長年人生を賭して経営に身をささげ、ようやくIPOを迎えた企業や経営者に対して、低すぎる値付けがされているのではないだろうか。

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