頻発する「経理ミス」 対処法と予防法を考える:4つのミス(3/4 ページ)
業務の正確性とスピードが求められる経理部ですが、実際にはどの会社でも経理ミスが発生しているのも事実。発生しがちなミスを取り上げ、その対処法・予防法を考えます。
【2】ITシステム以外の予防策
(1)経理教育の実施
経理のミスを予防するには、ITシステムを利用するだけではなく、関係者に経理教育を実施して、必要な経理の知識を持ってもらうことも大切です。
なお、ここで言う関係者とは、経理部門の人だけではなく、間接的に経理業務に関わる人も含んでいます。
例えば、営業部門や製造部門の人にも、経費精算で使用する勘定科目の意味や消費税の課税区分の違い、固定資産と消耗品の違い、交際費として申請するべきもの、摘要欄の記載事項といった基礎的な経理の知識を持ってもらうことが大切です。
(2)タスクリストの共有と業務の見える化
1人の担当者が長年同じ業務を担当していると業務がブラックボックス化してしまい、情報が十分に共有されていない状況が見受けられます。そして、このような状況を放置していると、ミスの温床になってしまいます。
そうした状況を改善するために有効なのが、タスクリストの共有です。
具体的には、経理部門のメンバーが共通のタスクリストを使って「担当者名、業務の内容、期限、現在のステータス」等の情報を共有することによって、「誰が、いつ、どのような業務をしているのか」を明らかにし、失念等によるミスの予防に役立てることができます。
ミスの発見とその修正
前述のようなITシステムの活用等によって多くのミスを予防することができたとしても、残念ながら、全てのミスをゼロにすることは難しいです。
予防したにもかかわらず発生してしまったミスについて、どのような仕組みでチェックすればよいのでしょうか。それを考えるにあたってはミスの「影響の大きさ」と「問題なく修正できる期間」を考慮することが大切です。
【1】ミスの影響の大きさ
経理ミスの影響は、全てが同じ大きさではありません(図表4)。例えば、同じ勘定科目で発生した費用の計上漏れであっても、100万円の計上漏れは100円の計上漏れよりも1万倍大きな影響があります。
また、金額の大きなミスだけではなく、取引先等に直接関係するミスも一般的に大きな影響があります。例えば、10万円で発行するべき請求書の桁数を間違えて100万円として発行してしまった場合、得意先からの信用を失うことになるかもしれませんし、得意先A社に送るべき書類を誤ってA社の競合であるB社に送ってしまったら、A社の機密情報がB社に漏えいしてしまうかもしれません。また、支払業務のミスによって支払期日までに支払いが完了しなかった場合には、仕入先の資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性もあります。
このように、金額が大きなミスや取引先等に直接関係するミスはその影響が大きいため、特に注意する必要があります。
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