CMに登場したタレントが話題になったのに、大手企業の幹部が“がっかり”した理由:あるべき広告戦略とは(1/4 ページ)
売り込み色の強い広告や、派手さで取り繕った広告は消費者に見透かされる。筆者は、広告戦略において“本質”が求められるようになったと指摘する。具体例とともに今後の目指す姿を考える。
今回は、広告戦略において“本質”が求められるようになった結果、“表層的”なものが消費者の購買意欲を刺激しなくなったというお話をしたいと思います。
タレントは覚えているけど肝心の商品は?
誰もが知る大手企業の幹部からこのような相談を受けました。
「宣伝部と大手広告会社が来期の計画を立てて、年間300億円だった広告予算を350億円にしてほしいと要望してきました」
彼らの根拠はこうです。
「昨年うちは売り上げが絶好調でした。けれど、広告予算はその前の年から50億円下げられて今の300億円に至っています。売り上げが上がったのだから、350億円に広告費を戻してほしい」
要望を聞いた役員はこう思ったそうです。
「役員という立場からすると『広告費を下げたのに売り上げが増えた』ことになるので、こんなにうれしいことはないんです。商品力を磨き上げた結果、広告効果も上げることにつながった。この流れが理想です。売り上げが上がったから広告費をもっとかけるというのには賛同できないのですがどう思いますか?」
酒類メーカーである別の企業からはこのような声を聞きました。
「うちのお酒のCM、起用した2人のタレントのおかげでかなり話題になりました。『あの犬猿の仲の2人がCMで共演するなんて!?』というのが理由です。でも、その後、お恥ずかしい事態になったのです。それは、タレントは覚えているけれど、どの商品、どの企業のCMだったか覚えている人が相当少なかったんです。広告が主役なのか商品が主役なのか分からないCMを作ってしまったことに反省しています」
企業が反省する一方、担当した広告会社はそのCMを話題になった“作品”として手応えを感じたことでしょう。
これがよくある広告主と広告会社の意識のズレです。
本来の目的とは?
広告の役割は、タレントを際立たせることではありません。企業の本質的意義や商品力を深く掘り下げ、消費者の心に響くように伝えることにあります。広告会社の売り上げはクライアントの広告費ですから、いかに多く広告を投下してもらえるかに自社の業績がかかっています。しかし、クライアント観点では、かけた広告でどれくらい売り上げが上がったかが成果の指標となります。広告の担当者は、予算を潤沢に確保しておいた方が活動しやすいという観点から、前述のように多く広告費を確保しがちです。しかし、それでは企業経営の根幹である収益効果や商品力の観点が希薄になってしまいます。目的、目標を見失わずに広告を検討しなくてはなりません。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 新成人が「欲しい車」ランキング 3位はレクサス、2位はBMW、1位は?
ソニー損害保険は新成人(2001年4月2日〜02年4月1日生まれ)を対象に実施した「2022年 新成人のカーライフ意識調査」の結果を発表した。新成人が欲しい車とは? - 「家なんて買わなければよかった」と思う瞬間ランキング 1位は「ローン返済が苦しいとき」、2位と3位は?
「家なんて買わなければよかった」と思う瞬間は? 経験者にアンケート調査を実施したところ、1位は「ローン返済が苦しいとき」だった。 - 新成人の「結婚したい年齢」 2位は「28歳」、1位は?
結婚相手紹介サービスを手掛けるオーネットは、「第27回 新成人の恋愛、結婚に関する意識調査」の結果を発表した。新成人が結婚したいと考えている年齢は?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.