「関西スーパー争奪戦」は始まりにすぎない!? 関西進出を狙う「オーケー」の恐るべき“実力”:34期連続増収(4/4 ページ)
2021年は「関西スーパー争奪戦」が注目された。オーケーは敗れたが、関西進出を検討している。競合他社と比較して見えたオーケーの実力とは?
(3):低価格と高品質をいつでも保証する
オーケーはEDLPを徹底しています。他店で特売がある時は、その特売価格に合わせてオーケーの価格も変更。他店よりも安く設定します。
単に特定商品の集中仕入でコストを抑えるということではなく、店頭の「ご意見カード」を活用して顧客が要望する商品を仕入れるようにもしています。
また、「オネスト(正直)カード」も有名です。長雨が続くと野菜の品質は落ちますが、品薄になるため店頭価格が上がることはよくあります。その場合には、程度の悪い商品を高く値付けして売ることになります。これは、売り手目線の商売であり顧客に対して正直ではありません。このような時にオーケーでは「オネストカード」というPOPを売り場につけて、「長雨のため野菜の質が悪く高値となっています。天候の回復を待ってお買い上げください」と顧客に伝えます。こういったPOPは、青果売り場でよく見かけます。「高くても構わない」という人は購入しますし、オネストカード通りに買わない人もいます。顧客に事情を正直に伝えて、選んでもらうようにしているのです。
こうした発想は全て、飯田会長の「嫌だなと思うことはしないこと」という根本的な考え方からきています。顧客に説明できないことはできるだけやめる。こうしたシンプルな顧客中心の発想がオーケーの根幹にあります。これが熱烈なファンを生んでいる理由です。
(4):ファンを増やし続けるオーケーの会員組織
同社には「オーケークラブ」という会員組織があります。この会員組織に加入すると、現金払いの場合に食料品(酒類を除く)が3%相当額割引になります。入会時にかかるのはカード発行費用200円のみ。細かい個人情報を登録する必要はなく、居住地の郵便番号だけで入会できます。気軽に入れる会員組織ということもあり、すでに会員は593万人(21年3月時点)です。もともと安い上に、会員になるとさらに割引という特典はかなり強烈で、現金客が多いのも同社の特徴です。結果的にキャッシュレス決済比率をある程度抑えることができており、同社がカード会社へ支払うクレカ手数料も抑えることができます。
オーケーの創業者・飯田勧会長の長兄は、父親の事業である岡永の後継者として活躍、次兄・飯田保氏は居酒屋「天狗」などを運営するテンアライドの創業者。五弟・飯田亮氏はセコム創業者というそうそうたる実業家一族です。父親が経営する酒問屋・岡永商店の小売部門として58年に東京の板橋にオープンさせたのがオーケーの始まり。オーケーという名前を命名したのは両親で、「発音が簡単で世界中どこでも同じという理由からつけた」という話を以前聞いたことがあります。
何事もシンプルに、顧客にとって正直に商売をする会社はいつの時代もファンが増え、業績は後からついてくるのです。
かつての関スパはスーパー業界のお手本でした。冷蔵ケースの導入や、鮮魚や精肉のパック販売によるセルフ販売方式の開発など、日本のスーパーの礎を作ってきた会社です。今後はオーケーのようなローコスト経営をモデルに、高収益型の経営を取り入れるべきではないでしょうか。
オーケーはこれから関西地区にも出店を開始する予定です。関西地区の顧客争奪戦が始まります。関スパ争奪戦は序章に過ぎません。ここからが本当の勝負なのです。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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