無視できなくなった「ESG投資」 AIで「有望な企業」の見極めが加速?:金融の新しいトレンド(3/4 ページ)
テクノロジーの活用による進化が進む金融業界。そこに今、新たな可能性が生まれようとしている。それはAI(人工知能)を活用し、より社会にとって価値のある企業に投資を行おうというものだ。キーワードとなるのが「ESG投資」である。
AIはどう解決するのか?
こうした流れの中で注目されているのが、AIによるESG投資の支援というわけだ。もちろんAIがあらゆる分析や提言の実施を代替してくれるわけではないが、膨大なデータを一定の基準で評価するために活用できるのではないか、という期待が高まっている。
いくつか実際の取り組みを挙げよう。まずこの分野で先駆けといえるのが、13年創業のスタートアップである、米国のTruValue Labsだ。
同社はESG分析におけるAI活用に初期から取り組んでいた企業の一つで、対象企業が発表したESG関連の非構造化データ(環境保護の取り組みに関して記載した記事など)を構造化し、把握されたキーワードを専用のタクソノミー(分類)に基づいて評価・定量化するという分析を行っている。
さらに彼らが提供する「Insight360」というサービスでは、10万以上という大量の情報源から各種公知情報(メディア記事やプレスリリースなど)を集めて分析し、そのビッグデータに基づいてESGスコアをリアルタイムで算出するという内容になっている。
また、15年創業のスタートアップ企業Sensefolioも、AIを活用したESG分析に取り組んでいる。評価対象の企業自らが提供するESG関連情報だけでなく、さまざまな公知情報を収集し、AIによる解析を実施。リアルタイムにESGスコアを算出するという取り組みを行っている。
情報源の数はこちらも10万以上に達しており、それらから得られる情報の中には企業にとって都合の悪いものや、厳しい指摘になるものまで含まれる。例えば、差別やプライバシー侵害、最近でいえばロシアのウクライナ侵攻といった政治的テーマをめぐり対象企業が受けた指摘なども判断材料となる。
Sensefolioは、AIならではの情報処理能力を生かし、この膨大な情報を2億ものデータポイントに整理。それを1万以上のメトリクス(指標)に変換して、最終的にESG、すなわち「環境」「社会」「ガバナンス」の3カテゴリー11項目のスコアを算出している。対象となる企業の数は、実に80カ国、3万社以上に達するそうだ。
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