東証の市場再編〜プライム市場など新たな3市場が始動:市川レポート 経済・相場のここに注目
東京証券取引所(以下、東証)は4月4日、「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「ジャスダック」の4市場を再編し、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場を発足させました。
4月4日からプライム、スタンダード、グロースの新市場が発足、各市場指数は初日上昇でスタート
東京証券取引所(以下、東証)は4月4日、「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「ジャスダック」の4市場を再編し、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場を発足させました(図表1)。東証が本格的に市場の再編に着手したのは、市場第二部を新設した1961年以来約60年ぶりとなり、今回、新市場への新規上場および上場維持には、厳格な審査基準が設けられました。
新市場への上場企業数は、実質最上位のプライム市場が1839社、スタンダード市場は1466社、グロース市場は466社となっています。また、4月4日から、新市場に上場する企業の値動きを示す指数の算出が開始されました。算出基準日となる4月1日比で、東証プライム市場指数は0.5%高の1004.82、東証スタンダード市場指数は0.6%高の1006.17、東証グロース市場指数は3.4%高の1033.54で、それぞれ取引を終えました。
プライム上場企業の一部は基準未達で経過措置を適用、TOPIXは算出継続だが見直しの方向
なお、市場第一部の上場企業数は、4月3日時点で2177社でした。プライム市場の上場企業数は1839社ですので、上場企業数は市場第一部から約16%減少したことになります。ただ、1839社のうち、295社はプライム市場の上場維持基準を満たしておらず、基準達成に向けた計画の開示などによって、プライム市場への上場が認められる「経過措置」を受けています(図表2)。
また、市場再編に伴って、東証株価指数(TOPIX)の見直しも実施されます。TOPIXはこれまで、市場第一部に上場する全銘柄で構成されていましたが、今後は市場区分によらず、流通株式時価総額100億円以上の銘柄で構成されることになります。100億円未満の銘柄は、「段階的ウエイト低減銘柄」とされ、2022年10月末から2025年1月末まで、四半期ごとに10段階で構成比率が低減されていきます。
新市場は無事始動、ただ経過措置で基準が緩和されるなど、市場の活性化にはまだ課題が残る
今回の市場再編では、新市場移行に関わる経過措置の適用や、TOPIXの算出継続など、東証の配慮があったこともあり、4月4日の株式市場に大きな混乱はみられませんでした。しかしながら、その一方で、経過措置を受けた企業は、前述の通りプライム市場では1839社中295社、また、スタンダード市場では1466社中209社、グロース市場では466社中45社に達しており、上場維持基準を緩和してのスタートとなりました。
新たな3市場が無事に始動したことは好ましいことですが、旧市場から大きく変わったという声は少ないように思われます。世界から投資マネーを呼び込み、市場を活性化させるには、更なる上場企業数の絞り込みなど、もう一段の改革が待たれます。また、新たに算出が始まった3市場の指数についても、海外投資家に積極的な活用を望む場合、先物の設定が不可欠と考えます。
市川 雅浩(いちかわまさひろ) 三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。
- 当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメントは責任を負いません。
- 当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
- 当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績および将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
- 当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
- 当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
- 当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。
関連記事
- 来年から「一部上場企業」は無くなります……呼び名変更「プライム」化で何が変わるのか
東京証券取引所は2022年4月4日に、これまでの「東証第一部」「東証第二部」「マザーズ」「ジャスダック」といった市場区分から、「プライム」「スタンダード」「グロース」という新たな市場区分へ移行する。「現在、東証一部に上場している銘柄がスタンダート市場に入ってしまうのか」という点と、「東証第一部に連動している株式指数のTOPIX(東証株価指数)はどうなるのか?」という点に注目したい。 - 東証が新市場区分の選択結果を発表
東京証券取引所は1月11日、4月4日に移行予定の新市場区分について、全上場企業3777社の選択結果を発表しました。実質最上位の「プライム市場」を選択した企業は1841社となり、残りの344社は「スタンダード市場」を選択しました。また、東証2部上場企業474社は、すべてスタンダード市場を選択しました。 - ロシアに依存しない世界経済を織り込み始めた株式市場
株式市場はロシアに依存しない世界経済の織り込みを開始、初期段階の不透明感が株安要因。 - リスクオフの円高が進まない理由
ウクライナ情勢の混迷で円は大半の通貨に対して下落、いわゆるリスクオフの円高とはならなかった。 - 121円台をつけてきたドル円〜今後の見通し
ドル円は年明け以降、おおむね1ドル=114円〜116円を中心とするレンジ内で推移していましたが、3月11日にドルの上値抵抗線として意識されていた116円35銭水準を上抜けると、ドル買い・円売りの動きが一気に加速しました。ドル円は3月22日に2016年2月以来、約6年1カ月ぶりに121円台を回復し、翌23日には121円41銭水準までドル高・円安が進行しました。
© 三井住友DSアセットマネジメント