ソニーG、人気ゲーム「フォートナイト」開発元に1250億円追加出資 出資元が「PS5」のSIEでない理由:株式保有率は4.9%に(2/2 ページ)
ソニーグループが人気オンラインゲーム「フォートナイト」の開発などを手掛ける、米エピックゲームズに約10億ドル(約1250億円)を追加出資すると発表した。同社は仮想空間「メタバース」領域での連携強化などを主な狙いとしている。
英サッカークラブと提携 スポーツ×メタバースも強化中
「フェイスブック」の運営元がメタに社名変更したことなどをきっかけに、世界的な注目が集まりつつあるメタバースの領域は、ソニーGも同様に強化中の事業だ。21年11月には、イングランド・プレミアリーグ所属の強豪サッカークラブ「マンチェスター・シティー」とパートナーシップ契約を締結。メタバース上でのファンコミュニティ創出を目的に、同クラブのホームスタジアム「エティハド・スタジアム」や、所属選手をメタバース上で再現する実証実験を実施している。
実験では、ソニーG傘下の英Hawk-Eye Innovations(ホークアイ・イノベーションズ)が手掛ける、エレクトロニックパフォーマンストラッキングシステム(EPTS)やエピックゲームズ製のUnreal Engineを活用し、選手の動きをCGで忠実に再現する取り組みを進めているという。同様に、各ユーザーがカスタマイズ可能なアバターを作成できるようにすることで、メタバース上でファンエンゲージメントを高めるサービスの開発にも注力する。
「エピックゲームズはメタバースにおけるリーダー的企業の1社。事業環境の変化に迅速に対応するためにも、資本関係を通じた関係性は重要になる」(ソニーG)
こうした背景を見ると、ゲームだけでなく、複合的な事業展開の観点から、ソニーGが出資を決めたことが分かる。同社は1月、電気自動車(EV)事業に新規参入。3月には本田技研工業(ホンダ)とEVを共同開発すると発表している。ソニーGは傘下のグループ企業やエピックゲームズとの関係性を生かし、自動運転の実現で車内がエンターテインメントの舞台となる時代の到来にも備える。
ソニーGの21年度通期の売上高は9兆9000億円、営業利益は1兆2000億円となる見通し。このうち、ゲーム&ネットワークサービス事業の売上高は2兆7300億円、営業利益は3450億円となり、それぞれ全体の約3割を占める見通しで、同社にとって同分野は稼ぎ頭になりつつある。
ソニーGの吉田憲一郎会長兼社長は「出資を通じて、クリエイターとユーザーが時間を共有するメタバース分野での提携強化を楽しみにしている。2社の強みを組み合わせることで、スポーツ分野での新しいデジタルファン体験の開発やバーチャル空間での制作などさまざまな取り組みが加速するだろう」とコメントしている。
エピックゲームズは、ソニーGに加え、ブロック玩具「LEGO」を手掛けるレゴグループの親会社KIRKBI(ともにデンマーク)からも10億ドルの出資を受けた。同社とレゴグループは同月7日、子ども向けのメタバース空間を共同開発すると発表している。
2社からの出資に対し、エピックゲームズ創業者のティム・スウィーニーCEOは「この投資によって、プレイヤーは友人と楽しめ、ブランドは没入型体験を構築でき、クリエイターは独自コミュニティを構築して収益を得られるようなメタバース構築が加速するだろう」と話している。
エピックゲームズは米ノースカロライナ州ケーリーに本社を置く、1991年設立の企業。世界各国に計35の拠点を持ち、社員数は2200人以上。17年7月にリリースしたフォートナイトのユーザー数は世界で3億5000万人以上を誇る。
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