「サーモン」輸入にウクライナ侵攻の影響 それでもスシローやくら寿司が大きく慌てていない理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
ロシアのウクライナ侵攻がサーモンの輸入に影響を与えている。特に、ノルウェーからの空輸便がロシア上空を通過できなくなっている。一方で、スシローやくら寿司などがサーモン不足に陥っていない理由とは?
2月24日に始まったロシアのウクライナ軍事侵攻が、サーモンの輸入に大きな影響を与えている。なぜなら、日本のサーモンの主要な輸入国の1つ、北欧のノルウェーからの空輸便が、ロシア領内のシベリア上空を飛ぶことができず、迂回を強いられているからだ。
そのため、サーモンを大量消費する回転寿司各社では、チリ、カナダ、英国など、他の国々からの輸入を増やしている。また、国産のサーモンを使う動きも出ている。
ノルウェー産サーモンの和食、特に寿司への貢献度は高い。今や、マグロと並んで人気の寿司ネタであるサーモンだが、ノルウェー産が登場するまでは、寿司ネタとしてサケは使われていなかった。
天然のサケは、アニサキスなどの寄生虫の問題があり、生で食べることはできない。古来より和食ではサケは焼いたり鍋にしたりと、加熱して食べる魚だったのだ。
生食用サーモンを巡る、ノルウェーなど海外産、国産の動向をまとめてみた。
量は確保できている
世界の養殖サーモン生産量は2021年に320万トンに達したが、シェアの45%をノルウェー、25%をチリが握るといわれる。最大産地のノルウェーの動向がいかに重要かが分かる。
なお、日本のサーモン市場は、国産はわずか2割で、8割を外国産が占めている。日本の場合、農林水産省の調べによれば(22年1〜3月)、サケ・マスの輸入は数量ベースで、1位のチリが約74%と圧倒的で、2位のノルウェーは約13%となっている。
ノルウェー産サーモンの供給に関しては、結論からいうと、数量ベースでは既に回復してきている。しかし、迂回路によるコスト高のため、金額ベースでは2桁増となっている。
ノルウェー水産物審議会 日本担当ディレクター ヨハン・クアルハイム氏への取材から、ノルウェー産サーモンの現状を報告する。
ロシアのウクライナ侵攻開始直後に、ロシア上空が閉鎖されたため、ノルウェーから日本に直行便で輸送されていた「ノルウェーサーモン」(アトランティックサーモン)や「フィヨルドトラウト」(ニジマス)は迂回路を通らなければならなくなった。既に日本に向かっていたサーモンは、他の便に振り替えられ、一部は他の国で販売された。
侵攻開始後1週間のノルウェーから日本へのサーモン輸出量は、前年同期比30%減にまで落ち込んだが、数週間で数量的にほぼ回復した。
しかし、迂回により飛行機に多くの燃料を費やすため、22年の18週間における日本向けノルウェー産サーモンは、数量ベースでは同12%減の1万3526トン、価格が同12%増となった。数量の減少分は主に「スポット価格」で販売されるサーモンが減っていることに起因する。
しかし、日本の輸入業者の多くはノルウェーの業者と長期の契約を結んでいるため、他の近隣国に比べれば価格上昇を抑制できている。例えば、韓国の場合、数量は同13%減の1万2966トンとなったのに対して、価格は同28%増と価格上昇が著しい。
迂回路は、ノルウェーの首都オスロとデンマークの首都コペンハーゲンから、北極を通る北ルート。もう一つは、中東のドバイ、カタールを経由して日本に向かう。この南ルートの一部は、オランダのアムステルダム、ドイツのフランクフルトまでトラック輸送されてから、空輸されるものもある。水揚げされたサーモンは、72時間以内に日本に到着する。
ノルウェーは1970年代よりサーモンの養殖を始めて、世界100カ国以上に輸出している。日本へは80年代から輸出していて、90%がノルウェーサーモン、10%がフィヨルドトラウト。
両者は似ているが、ノルウェーサーモンは脂がのって甘みが強く、フィヨルドトラウトは赤身が多い。どちらも寄生虫のない、厳格に管理された飼料しか与えられない養殖魚だ。
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