なぜスシローは「おとり広告」をやらかしたのか 「また起きる」これだけの理由:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
回転寿司チェーン「スシロー」の「おとり広告」が炎上した。テレビ広告で盛んに宣伝していたが、それらの広告は「偽造」だったのだ。「モラルが低下している」「本社と現場の間に溝がある」といった指摘があるが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。それは……。
不正の王道パターン
今回のスシローやウニの産地偽装も、この不正の王道パターンにハマっている。「足りない」という事実をゴマかすことに頭の中が一杯になってしまって、それが結果として「不正」になってしまっているのだ。
例えば今回、スシローの「おとり広告」だと指摘されたのは「ウニ」と「カニ」なのだが、フェアのCMを流していたまさにそのとき、2つとも世界的な供給不足で価格が高騰していた。日本だけではなく、世界中で「足りない」という悲鳴が上がっていたのだ。
まず、ウニに関しては、大手外食チェーンが値段の安さからよく使うチリウニが足りなかった。漁期は3〜8月期なのだが、21年は天候不順などで不漁だったのだ。「水産大手によると、平年の供給量は製品ベースで2000トン前後だが、今年は1300〜1500トンの見通し」(日本経済新聞 21年12月20日)だった。
「だったら国内のウニを使えばいいじゃない」とマリー・アントワネットのようなことを言い出す人がいるかもしれないが、実は昨年秋、北海道のウニは壊滅的な被害を受けていた。
『"赤潮"か ウニ・サケ大量死問題…鈴木知事 来週にも東京へ「国へ原因究明を要望」 水産庁が現地調査も』(北海道ニュースUHB 21年10月7日)
これを受けて、寿司店などでは相次いで、ウニやカニの取り扱いを一時中止したり、価格を改訂するなどお詫び文を出したりしていた。そんなときにスシローでは、「ウニが大盛りで100円!」なんてCMを流していた。消費者庁と公正取引委員会が動くのも納得だろう。
また、カニも「フェア」などできる状況ではなかった。実は日本の市場に安く出回っているカニの多くは輸入品だ。水産庁によれば20年のカニ輸入額は473億円で、そのうちの6割がロシアが占めている。カナダが18%で、米国が11%だ。
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