日産SAKURAに補助金100万円? 期待の軽BEVを潰す、無策な補助金行政:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
日産「SAKURA」と三菱自動車の「eKクロスEV」は、両社の合弁で設立された「NMKV」で設計された双子のクルマだ。今もっとも期待される軽BEV(バッテリー電気自動車)であり、すでに予約注文が殺到している。
300万円のクルマに補助金100万円?
さて、まあ実際の購入に際してオプションを一切選択しないということもないだろうから、ざっと見て、250万円から300万円程度のこのクルマは、やはり、期待に反して軽自動車としては高いとしかいいようがない。そこで手が届くように掛けられるハシゴが補助金である。
この補助金も地域とモデルによって差があるので、ここもとりあえず大盤振る舞いの東京を例に挙げて、110万円といっておこう。経済産業省の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」が最大55万円と、東京都環境局の「ZEV補助金」が60万円、これに減税などが加わる。これにさらに区の補助金も付くという話もあるが、奇々怪々で筆者も整理が付かないので、そうした詳細はバイヤーズガイド記事を検索して探していただきたい。
ちなみに東京都は、さらに自宅にBEVの充放電設備を導入する場合、設備費最大75万円の半分と、工事費最大40万円を上乗せする。血税を原資に豪快なバラマキっぷりである。本当に役に立つんだろうな? と問い詰めたくなる。
筆者の基本的スタンスは、「現在のBEVはまだまだ発展途上」という捉え方だ。総合的な商品性ではまだ既存の内燃機関やハイブリッドに及ばない。だからこそ補助金が必要なのだ。イーブンに戦える競争力が付いてくるまで補助金が必要だということには異論無しで同意する。
「内燃機関やハイブリッドに及ばない」という記述にカチンと来るBEVファンもいるだろうが、もしBEVが既存のクルマより優れた商品だと仮定するならば、即刻補助金を打ち切るのが筋というものだろう。優れた商品は放っておいても市場で勝つに決まっているので、補助金も減税も全く意味はない。予算の無駄遣いである。
関連記事
- 日産SAKURAは軽自動車のゲームチェンジャーになり得るか?
日産自動車が、以前から予告していた軽BEVの「SAKURA」を発表した。5月20日の会見で、日産の星野朝子副社長は「軽の常識を変えるゲームチェンジャー」とSAKURAを評した。 - 軽BEV「日産サクラ」、発表から3週間で受注1万1000台以上に
日産自動車は6月13日、新発売を控える軽電気自動車の「日産サクラ」が受注1万1000台を突破した、と発表した。日産サクラは同社が5月20日に発表した新型車両で、6月16日に販売を開始する。6月13日時点での受注台数は1万1429台。 - 日産と三菱、軽EV「SAKURA」「ekクロスEV」発表 価格は180万円台から
日産自動車と三菱自動車は5月20日、軽自動車規格のEVとなる新型車、「SAKURA」(日産)、「ekクロスEV」(三菱)を発表した。価格は補助金込みで180万円台から。 - EV生産比率を5倍に増やすマツダと政府の“パワハラ”
マツダは、30年時点のEVの生産比率を25%と大幅に上方修正した。ではなぜマツダはそれだけEVの比率を大きく再発表したのかといえば、これは政府によるパワハラの疑いが濃厚である。 - 自動車メーカー8社のカーボンニュートラル戦略
各社のカーボンニュートラル戦略はどうなっているのかについて、俯瞰的に見てみたいと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.