日産SAKURAに補助金100万円? 期待の軽BEVを潰す、無策な補助金行政:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
日産「SAKURA」と三菱自動車の「eKクロスEV」は、両社の合弁で設立された「NMKV」で設計された双子のクルマだ。今もっとも期待される軽BEV(バッテリー電気自動車)であり、すでに予約注文が殺到している。
家電業界にトドメを刺したエコポイントを忘れたか?
補助金は麻薬である。一度受け入れると抜けられない。禁断症状で大変な苦しみを与えるのだ。だからこそ補助金は必要最低限を見定め、かつしっかりとした出口戦略を立てなくてはならない。
こんな無策な補助金を作った政治家はバカとしかいいようがない。学習能力がゼロである。実はこれには悪しき前例があって、2008年にスタートした「家電エコポイント」制度がそうだ。リーマンショックで迎えた不況の中で、エコ家電の普及推進と、家電メーカー救済の両面を睨んだ政策だったが、一度補助金を入れたが最後、案の定脱出できなくなった。当初の打ち切りプランを何度も延長し、最終的には10年度いっぱいで終了したのだが、終了後の家電市場は駆け込み需要の反動で急速に落ち込んだ。まさに日本の家電産業に止めを刺す最後の一撃になった。
限られた補助金を奪い合うために、家電各社は、必死に増産を掛けた。売り場に商品がなければ売れない。取り寄せなどといっていたら期限に間に合わないかもしれない。客もメーカーもそう思うのだから、在庫はマストである。何時終わるかが政治的に曖昧だった補助金のせいで、家電各社は切り上げ時を見定めることができず、結局家電エコポイント制度が終わった時には不良在庫の山となったのだ。
補助金が止まった途端、買いたい人はいなくなる。しかも補助金の強力なインセンティブで需要の先食いをしてしまったので、一向に回復しない。政治家はサステイナブルという単語を毎日千回唱えるべきだろう。こうした愚かな失敗を再び、それも今、国の基幹産業である自動車産業で行うつもりなのだろうか?
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