コロナ禍最盛期でも売上高1000億円超え 欧州主要クラブとの比較で見えたJリーグの特徴と課題:公開資料で検証(3/3 ページ)
国内外で新型コロナへの警戒感が薄れつつある中、コロナ禍がJリーグと欧州主要クラブの経営にどんな影響を与えたのか、公開資料を使い、検証した。
Jリーグの“コロナ禍ダメージ”が小さいワケ
直近の状況はどうでしょうか。5月末にJリーグが発表した21年度の売上高は54クラブ(J1、2、3)合計で1147億円となり、115%の成長率でした(3月決算である3クラブ柏、湘南、磐田を除いた54クラブの情報) 。45クラブが増収となり、全体としてコロナ前の規模に戻りつつあります。入場料収入こそ、コロナ前の53%(19年度比) でまだ回復には至っていないですが、営業収益は、コロナ前の19年度対比で93%まで戻ってきています。
欧州と比較すると、Jリーグはコロナ禍の影響が相対的に小さいようにみえます。なぜでしょうか。さまざまな要因がありますが、売上高やマッチデー収入(コロナで一番影響を受けた部分)の規模の違いが挙げられます。
コロナ前の19年度決算で、ヴィッセル神戸がJリーグ史上最高益となる114億円を記録しましたが、前述の通り、バルセロナは同年度にサッカー史上最高益となる1200億円を記録しました。世界トップとJリーグトップで、実に10倍以上の差があるのです。
19年度バルセロナのマッチデー収入は225億円で、全体の約20%を占めるため、これがコロナの影響で激減した時の全体収益へのインパクトが、Jクラブの比でないのは想像に難くありません。
Jリーグは、日本のトップリーグであるJ1ですら、コロナ前の19年度の平均観客動員数が2万751人で、毎試合10万人近い観客を集めるビッククラブもある欧州主要リーグの比ではないです。
こうしたことに加え、日本は「失われた30年」で物価が上がっていない珍しい先進国ですので、チケット単価も安いのです。ゆえに、コロナでマッチデー収入が減少しても、営業収益へのインパクトは、良くも悪くも、欧州トップサッカークラブと比べて小さいのです。
次回は、サッカーと異なるスポーツではありますが、収益においては、長年アジアスポーツのトップに君臨する日本プロ野球を、欧州トップサッカークラブ比較で見てみたいと思います。
書き手:岡部 恭英(おかべ・やすひで)
UEFA(欧州サッカー連盟)専属マーケティング代理店「TEAMマーケティング」シニアバイスプレジデントAPAC(アジア・パシフィック)代表。
1972年大阪府生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後の96年太知に入社。東南アジアや米国シリコンバレー勤務でエレクトロニクスやIT関連ビジネスに関わった。2006年英ケンブリッジ大学院でMBA取得後、TEAMマーケティング入社。欧州CLに関わる初のアジア人として、ヨーロッパ、中東北アフリカ、アジア地域での放映権やスポンサーシップビジネスに従事。21年から現職。スイス在住。
他にもJリーグアドバイザー、NewsPicksプロピッカー、日本スポーツビジネス大賞審査委員、Boardwalk顧問、Halftimeアドバイザーなど。慶大体育会ソッカー部出身。
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