なぜ、在庫不足に? スシロー「おとり広告」で報告書 AIの予測外れる:措置命令を受け
消費者庁から景品表示法違反(おとり広告)で措置命令を受けた大手回転寿司チェーンのスシローは7月8日、監査委員がまとめた調査報告書を公開した。
すしの在庫が実際はないのに販売しているかのように宣伝したとして、消費者庁から景品表示法違反(おとり広告)で措置命令を受けた大手回転寿司チェーンのスシロー(運営:あきんどスシロー)は7月8日、監査委員がまとめた調査報告書を公表した。報告書は、スシローが実現不可能な宣伝を故意に行ったわけではないとしつつも、販売予測が不十分で、役員のコンプライアンス意識も低かったと指摘し、「猛省を促す」と記した。
スシローがおとり広告を指摘されていたのは、「新物!濃厚うに包み」「とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流 3 種盛り」「冬の味覚!豪華かにづくし」と称した3商品。いずれも販売期間中に早期完売するなど在庫不足となったにも関わらず、販売しているかのようにテレビCMなどで宣伝を続けていた。
報告書は、親会社である「FOOD & LIFE COMPANIES」の社外取締役で作る監査等委員会が、外部専門家と共同で調査しまとめた。
この報告書では、スシローの販売計画数量の予測に不備があったと指摘した。スシローは2021年7月頃、過去の売上実績を基礎データとして、販売数量を予測するAIシステムを導入した。AI予測で販売数量を算出する一方、在庫不足が出ないように、仕入れ経験のある職員が肌感覚で数量を多めに設定する「意思入れ」という調整を行っていたという。結果的には、「意思入れ」を行ってもなお、在庫不足が生じる事態となった。
この数量予測について、報告書は「テレビCMによる顧客訴求力が考慮されていなかった」などとし、販売予測が不十分だったことが在庫不足を招いたと指摘した。
また、利用客から「うに包みのため来店するもいつも品切れで不満」「だまされた気持ち」などといったクレームが多数寄せられ、経営会議で報告されていたにも関わらず、事態を放置していた。報告書は、上層部のコンプライアンス意識の低さを指摘し、「猛省を促す」と記した。
報告書を受け、スシローは、申し出のあった役員3人の役員報酬を7月から3カ月間、月額10〜30%カットすると発表。「改めまして深くおわび申し上げます」と謝罪した。
消費者庁によると、スシローは21年9〜12月、「新物!濃厚うに包み」とうたい1貫110円で販売するとした広告や、「冬の味覚!豪華かにづくし」と称してズワイガニなど4貫を858円で販売するとした広告を、それぞれテレビCMや同社Webサイトで表示。
実際には、販売期間中に早期に完売して販売できなかったり、早期完売の可能性を見越して販売を一時停止したりしていた。こうした在庫不足によって終日提供できない日が1日以上あったのは対象店舗の9割超に上るとしていた。
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