「厳しすぎる」松山市役所の服装ルール 規定とハラスメントの境界線は? 弁護士に聞いてみた:髪色で処分?(2/3 ページ)
「マニキュアなどは透明または透明に近い色」「髪を意図的に染めることは不可。白髪染めは地毛の色で」「ネクタイ着用時のシャツは第1ボタンまで留める」「ミニスカートは不可」「装飾品は結婚指輪のみ」──愛媛県松山市役所に貼りだされた「勤務時間中の身だしなみモデル」が話題になっている。そこで、一般的な企業では「服装規定の適法・違法のラインはどこなのか」「雇用側はどこまで規定として指定できるのか」といった疑問を、ハラスメントなど労働関連の法律に詳しい佐藤みのり弁護士にぶつけてみた。
「規定」と「ハラスメント」の境界線
──どの程度の範囲ならば適法なのか、また逆に言及してしまうと違法となるような項目があるのでしょうか?
佐藤弁護士: どのような内容の服装規定を置くかについて、会社の裁量は広く認められており、業務上の必要性や合理性がある限り、適法なルールといえるでしょう。
例えば、最近では、地下鉄運転士の髭を規制する規定について、違法性を否定した裁判例があります(大阪高裁2019年9月6日判決)。
「整えられた髭も不可」として、髭が剃られた状態を理想的な身だしなみとする基準を設けることについて、裁判所は、地下鉄運転士の立場(市民の信頼を損なわないよう職務遂行する立場であること)や、社会における髭の受け止められ方(髭が広く肯定的に受け容れられているとまではいえない日本の現状)などを指摘し、必要性・合理性があるとしています。
一方、内勤など、外部とかかわる機会がない従業員に対して、細部にわたる服装規定を設け、一律禁止するようなケースでは、業務上の必要性や合理性が否定され、違法となる可能性も否定できないでしょう。
──服装規定を作成する雇用側は、どこまで「規定」として指定できるのでしょうか?
佐藤弁護士: 先述のように、企業は、業務上の必要性と合理性が認められる範囲で、広く「規定」として指定することができます。
──「規定」と「ハラスメント」の境界線とはどこなのでしょうか?
佐藤弁護士: 違法な「ハラスメント」との境界線は、業務上の必要性と合理性にあります。服装規定を作る際は、服装規定の対象となる従業員の置かれた立場、仕事内容、企業の事業内容、服装規定の内容などを考慮し、業務における必要性や合理性の有無を検討しましょう。
その際、従業員の自由や、ルールがもたらす私生活への影響などにも配慮することが大切だと思います。
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