「探究」の指導 高校教員の5割が「生徒の質問に答える時間や人脈ない」:全国の教師360人にアンケート
教員の働き方改革を支援するトモノカイは、今年度から高校で必修となった「総合的な探究の時間」の指導について、全国の高校教員360人を対象に調査を行った。探究を教えていて感じる課題に、約5割の教員が「生徒からの質問に答える時間や人脈がない」と答えた。
仕事に役立つ調査データ:
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教員の働き方改革を支援するトモノカイ(東京都渋谷区)は、今年度から高校で必修となった「総合的な探究の時間(以下、探究)」の指導について、全国の高校教員360人を対象に調査を行った。探究を教えていて感じる課題に、約5割の教員が「生徒からの質問に答える時間や人脈がない」と答えた。
探究は、生徒が主体的に学習テーマを設定し、情報収集や分析をしてまとめるプロセスの中で、実社会で活用できる能力を育成することを目的とした科目。もともとは「総合的な学習の時間」という名称で、学習指導要領の改訂で「探究」と名称が変更された。
今回、同社はこの新学習指導要領作成に携わった國學院大學人間開発学部の田村学教授と共同で調査を行った。
まず、探究の指導上の課題について尋ねたところ、最も多かったのは「生徒からの質問に答えるために情報を調べる時間がない」で23%だった。次いで「生徒からの質問に答えるために大学の研究室などに問い合わせるネットワークがない」が22%だった。
「生徒からの質問に答える方法が分からない」も5%と、教員だけで生徒の質問に答えることに負担を感じる教員が多いことが明らかになった。
こうした課題をどう解決しているか聞いたところ、「教員同士で指導法を検討」との回答が43%と最も多かった。「指導法をレクチャーするセミナーに参加」は22%、「塾や指導の専門機関を学校に招き勉強」は4%で、専門家などに指導のアドバイスを求めながらも学校の中でのサポートは限られていることが明らかになった。
学校の授業以外で生徒の探究をサポートするとしたら、どのようなことに取り組みたいかという質問には、「放課後の教室で学生が生徒の学習をサポートする」が最も多い34%で、「放課後の教室で教員が生徒に補習指導を行う」(31%)を上回った。
「探究の副教材を生徒に配布する」も15%で、教員が指導する以外の方法を希望する教員が多いことが分かった。
國學院大學の田村教授は「これからは、学校外の組織の知見を活用することも必要ではないかと考える。また、多様な生徒の課題にどのように対応するかについても、多くの教師が不安を感じている。探究においては、生徒の学びを支え、ともに伴走する姿勢が大切であるとともに、そうした生徒のニーズに対応するためにも、さまざまな外部リソースを活用することを検討していくことが求められる」と同社を通じてコメントした。
調査は全国の高校で「探究」を指導している教員360人を対象とし、7月14〜28日にインターネットで実施した。
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