金沢の人気ラーメン「神仙」が東京駅に進出 廃業寸前から10店舗まで拡大した「起死回生の一手」:東京ラーメンストリートの舞台裏(1/6 ページ)
今や金沢を代表する人気ラーメン店も、一度は廃業寸前まで追い込まれたことがあるという。どうやってそこから東京駅進出まで躍進したのか。その起死回生の人生を聞いた。
今や東京駅八重洲口側の観光名所として知られる「東京ラーメンストリート」。2009年にオープンした東京にゆかりのある人気ラーメン店を集めた商業施設だ。21年7月からこの区画の1店舗を使い、約100日交代で日本各地の人気ラーメン店を期間限定で出店する企画「ご当地ラーメンチャレンジ by 東京ラーメンストリート」を展開している。
第1弾は21年7月から11月まで「ラーメンの鬼」として知られた佐野実さんが立ち上げた横浜市戸塚区にある醤油ラーメンの名店「支那そばや」。第2弾が21年11月から22年3月にかけて熊本を代表する豚骨ラーメンの名店「天外天」。第3弾が栃木県の佐野ラーメンの雄「麺屋ようすけ」が22年3月から6月まで出店していた。
続く第4弾として登場したのが、金沢の人気ラーメン店「金澤濃厚中華そば 神仙」だ。金沢や石川県の食材をふんだんに使用した豚骨ベースのラーメンで、金沢の人気ご当地ラーメンとしても知られる。
この「神仙」を05年、金沢の中央卸売市場近くに創業し、現在では石川県を中心に10店舗以上を経営するのが株式会社全力の元の河方卓社長だ。だが、今や金沢を代表する人気ラーメン店も、一度は廃業寸前まで追い込まれたことがあるという。どうやってそこから東京駅進出まで躍進したのか。その起死回生の人生を聞いた。
河方卓(かわかた すぐる) 全力の元社長。中学卒業後、就職し、さまざまな職を転々とする。一つの求人広告を見て、福岡から金沢に飛ぶ。セールスマン時代に知り合った飲食店、店長に惹かれ、飲食の世界へ。31歳で独立。後輩のラーメン店を譲り受け、自身の1号店をオープンする。福岡県1974年3月28日生まれ
2005年創業 加賀藩にヒント
――今回の「ご当地ラーメンチャレンジ」には、どんな経緯で出店したのですか。
実は東京ラーメンストリートが09年にオープンした時から見に来ていました。一ラーメンファンとして訪れたのですが、東京を代表する名店が一箇所に集まっていて、「夢の舞台だな」と思ったのが初めての東京ラーメンストリートとのつながりですね。
その時に「いつか『神仙』もこういった名店街に呼ばれるように頑張りたいね」と、一緒に訪れた従業員と話をした記憶が甦(よみがえ)ります。
あれからもう13年もたちますが、この東京ラーメンストリートで日本全国のラーメン企画をやるということでお声がかかりました。まさか自分が参加できるとは思ってもみなかったので、本当に夢のような心地ですね。
――河方社長は05年に「金澤濃厚中華そば 神仙」を創業しました。なぜ金沢で豚骨ラーメンをやろうと思ったのでしょうか。
僕の生まれは福岡なんですけど、仕事の関係で若いときに金沢に来たという経緯があります。もともと飲食業には携わっていたのですが、自分は幼いころからラーメンが好きで、いつか自分でラーメン店を持ちたいという夢がありました。31歳のころにそれが具体的に湧き出てきて、それで金沢でラーメン店を開いたのがきっかけです。
――もともとラーメンの修行をしていたのでしょうか。
そうではなくて、全く別の飲食をやっていました。当時は本当にお金もなく、昼はラーメン店で働いて、夜は本業の飲食店で働くという生活がずっと続いていました。
――それで金沢の中央卸売市場に「金澤濃厚中華そば 神仙」を出店するわけですが、店名に「金澤」と入れているのは金沢発のイメージを打ち出したかったのですか。
そうですね。最初は違う店名でやっていたんですけど、金沢はご当地ラーメンのようなものが当時はありませんでした。
地元のものを使ってやっていますというメッセージを分かりやすく訴求するために、店名に「金澤」を入れています。「澤」という旧字を使っているのは、江戸時代に加賀藩だった時は金沢が「金澤」という表記だったので、そこから付けていますね。
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