オンラインはリアル店舗を超える? “楽しい”を実現する勝ち組企業:新しい顧客体験(1/2 ページ)
スマートフォンの普及に伴い、あらゆるものがデジタル化した。消費者がリアルとデジタルを無意識に行き来する時代において、企業はどのような新しい顧客体験を提供しているのだろうか? BEAMSやスタバ、コストコなどの企業を事例に解説する。
近年、テクノロジーの進化とコロナ禍におけるネットショップ利用が顧客体験のデジタルシフトを急激に押し進めた。20年ほど前のEC黎明(れいめい)期に、ECと実店舗を組み合わせて連動させたビジネス形態を「クリック&モルタル」と呼んでいた。当時は、ECと実店舗をただ組み合わせるという概念であった。
しかし現在、商品を購入する前に消費者が実店舗に足を運んで価格や性能などを確かめた上で、オンラインで購入する「ショールーミング」や、インターネットで商品に関する情報を収集し、実店舗で購入する「ウェブルーミング」などの購買行動が示すように、ECと実店舗を融合させ顧客ニーズに適した体験を提供することが求められている。
スマートフォンの普及が、日常生活のあらゆる場面におけるデジタル化を加速させた。リアルとデジタルの境目がなくなり、消費者がリアルとデジタルを無意識に行き来する時代が到来した。そうした時代において、企業はどのような新しい顧客体験を提供しているのか、事例を踏まえながら紹介したい。
アパレルにおけるリアル×デジタルの体験
世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット2022 Summer」にBEAMSが4度目のメタバース店を出店するなど、アパレル分野はデジタルシフトが比較的進んでいると言える。一方で、購買にあたり試着が必要不可欠など、リアル店舗の存在価値も決して侮ることができない。これは、22年6月にサービスを終了したZOZOスーツの例を見ても明らかだろう。
「いかにリアルとデジタルの境目をなくすか」はアパレル業界の顧客体験を語る上で無視できないテーマだ。例えば、まだ実証実験中ではあるものの、大手アパレルのTSIホールディングスと京セラは共同でデジタルハンガーの開発を進めている。ハンガーの情報とアプリを連携させることで、顧客が購入はしなかったものの手に取った商品の情報をアプリで見返すことができるようになるという。リアル店舗での行動がデジタルに反映されるシームレスな体験と言えるだろう。
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