『アイドルマスター』シリーズと『ラブライブ!』が共演 バンダイナムコが仕掛ける音楽フェスの“DX”:ファンと作り上げる(2/2 ページ)
バンナムフェスでは『アイマス』や『ラブライブ!』『アイカツ!』シリーズなど、バンダイナムコグループから生まれたアイドルが楽曲を披露した。音楽フェスを展開する狙いをバンダイナムコエンターテインメント・クロスメディア課の吉本行気さんに聞く。
Twitterで何度もトレンド入り
――15日間の「バンナムフェス2ndオンライン」は期間限定配信とはいえ、全て無料でした。有名な声優やタレントも起用している中、どのようにマネタイズしているのでしょうか。
一つはバンダイナムコが持つECサイトへの回遊策がありますね。それぞれの番組中ではフェス期間限定のグッズの紹介や宣伝をする場面もあります。現在バンダイナムコグループ公式通販サイトの「プレミアムバンダイ」、バンダイナムコフィルムワークス・バンダイナムコミュージックライブの公式ショップの「A-on STORE」、そしてバンダイナムコエンターテインメント公式エンタメコマースサイトの「アソビストア」という3つのECサイトがあり、それぞれ扱っている商品が違います。
この各ECサイトとのコラボを積極的に展開しました。他にもゲーム実況配信を中心に、当社の手掛けるゲームに誘導する動線もあります。
ただ、この配信だけでマネタイズする狙いはありません。あくまで「前夜祭」の位置付けです。本番のフェスに向けて、気持ちや熱量を高めていただくことや、面白いなと思って回遊していただくことを狙っています。
まずやれるだけのことをやって、あとはフェス本番の集客やグッズの売り上げにつなげます。なので、トータルとして各作品に還元されていけばいいという考え方ですね。
――Twitterでも何度もトレンド入りを果たすなど、SNSでの反響も大きいものでした。マーケティング面では、どんなことを意識しているのでしょうか。
従来は企業などが消費者に、一方的に情報発信をしていく流れが強かったと思います。一方でインターネットの技術が進み双方向のコミュニケーションが発達した今、ファンメイドコンテンツになることをすごく意識するようになっています。ファンの方を単なる消費者として見なすのではなく、一緒に作品を作り上げるパートナーとして捉える考え方ですね。
その空間の一つがインターネット配信というわけです。インターネット配信では積極的にファンの方の意見を取り入れ、作品造りに生かせるようにしています。
ファンの方も作品造りに参画することによって、自分たちの行いが最後は自分たちに還元されるというわけですね。これによって企業とお客さまの長期的なつながりが期待でき、それが新しい経済モデルになることを意識してやっています。
――『ラブライブ!』も、「みんなで叶(かな)える物語」をテーマにして、NHK紅白出場をはじめ社会現象を引き起こしました。この考え方が新時代のマーケティングのスタンダードになりつつあるわけですね。具体的に「バンナムフェス2nd」では、どんな施策をしたのでしょうか。
バンナムフェス2nd当日に、パックマンのキャラクターを使った門を設置しました。実は、あれは15日間の配信でユーザーとのやりとりを重ねた結果、まずはサイト内のバーチャル空間に作ったものなんです。
それがフェス当日になってリアルなものになったというわけですね。毎日配信をご覧になられていた方は、あの門の意味が分かると思います。
――ファンと一緒に作り上げた門という見方もできるわけですね。
15日間、お客さんが頑張っていただいたのに応じた、感謝の思いが結集した門とも言えます。現地会場にも設置することができて、実際に「自分たちが今まで2週間いろいろ頑張ってやってきたことがまさにこの現地にあるぞ」という感じで写真を撮ってツイートした方もいらっしゃいました。
こういう仕掛けを作ることによって、お客さんにとってもただ時間やお金を消費しただけでなく、達成感にもつながります。これが「会場にもやっぱり見に行かなきゃ」という動機づけにもなってくれると思っています。
まだ本当に新しい概念であり、新しくやり始めたことなので、実験的な側面もかなりあります。ウィズコロナが進んできて、やっとイベント施策ができるような段階にもなってきましたので、これは今後も積極的に試していきたいですね。
音楽ダウンロードサイトのダウンロード数も急上昇
――フェスには直接、関連性が低いライバーやタレントを配信で起用したのは、やはり新規のファンも獲得していきたい狙いがあったのでしょうか。
そうですね。私たちはキャラクターコンテンツとゲームなどでビジネスをしています。やはり一人でも多くの方にどう興味を持っていただくかが課題になります。
その点では、今回はライバーさんとか小島よしおさん、狩野英孝さんとかに出演いただくことにより、普段私たちがお届けしているコンテンツに触れられていないような方々にもご覧いただけて、新しいコミュニケーションが生まれた手応えを感じています。
――新規ファンの獲得という意味では、1回目のバンナムフェスで『アイマス』中心のセットリストの中に『ラブライブ!サンシャイン!!』のユニット「Guilty Kiss(ギルティキス)」が飛び込んでいきました。素晴らしいパフォーマンスを見せたことで『アイマス』ファンなどの共感も呼び、Twitterのトレンド入りも果たしました。バンナムグループ内のコンテンツ間で、相互に新しいファンを生み出す狙いはどうなのでしょうか。
やはりそれは意識してやっています。こうした相乗効果を各作品で生み出したい狙いは確かにありますね。運営側だけでなく、演者の方たちこそ「新しいファンを増やすんだ」という思いで来ていただいています。
フェスというのもあり、既存のファンだけでなく、今まで自分たちを知らない人に知ってもらう場の意味合いもありますね。それはうまくいったと思っています。
――バンナムフェス2ndが終わってTwitterのトレンド入りを果たしただけでなく、iTunesをはじめとする音楽ダウンロードサイトのダウンロード数も急上昇し、ランキング上位を占めていたことも話題になりました。
実際にフェスのDay1もDay2も終わった直後に、その公演中にやった曲が iTunes などのランキングでトレンド入りしていました。着実に新規の方の獲得につながっていると実感していますし、すごくありがたいことだと思っています。
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