トヨタの危機管理は「さすが」なのか 香川さんの「CM放映停止」:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
トヨタ自動車の危機管理が称賛されている。俳優・香川照之さんとの契約更新をしない方針を明らかにしたことを受け、「さすが、トヨタ」などと評価されているわけだが、本当にそうだったのか。振り返ってみると、精細を欠いている部分があって……。
『トヨタイムズ』はどうなるのか
こういう経緯を振り返ると、今回のトヨタの危機管理は「さすが」というほどではない。むしろ、これがもし女性へのセクハラやパワハラに対して厳しい姿勢でのぞむ欧米社会だったら、「おいおい、なんだよ、注視って? やったことは明白なんだから何を見守ろうっていうんだ?」とトヨタの煮えきれない対応に、批判の矛先が向けられた恐れもあった。
つまり、芸者遊びやキャバクラ、銀座の高級クラブが「文化」として定着して、そこで働く女性はある程度のセクハラを受けてもしょうがないという日本だからこそ許されていた、極めてローカル的な危機管理と言える。
いずれにせよ、トヨタイムズが受けたダメージは大きい。二代目編集長が就任しても、「ああ、香川さんの後ね」「今度の人は女関係大丈夫?」なんて色眼鏡で見られてしまう。香川さんのような取材をしても、またスキャンダルでいつ消し飛ぶか分からない。
つまり、トヨタが目指している「トヨタ専用報道機関」という構想に大きなケチがついてしまったのだ。これを盛り返すために、ガラリと方針を転換するのか。それともまた誰か有名人に香川さんのようなことをやらせるのか。『トヨタイムズ』の今後に注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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