スノーピークは「法的措置」を準備してはいけない、これだけの理由:スピン経済の歩き方(1/7 ページ)
アウトドアブランドの「スノーピーク」が、怒りのリリースを発表した。同社の山井梨沙社長が「不倫辞任」したことに対して、全く関係のないデマが増えているので、やった人間を訴えると警告しているのだ。しかし、スノーピーク社のスタンスにもやもやしている人も多いのではないだろうか。なぜかというと……。
「社長の不倫辞任」にかこつけて、まったく関係のない誹謗(ひぼう)中傷したり、デマを広めたりしている「便乗犯」がたくさんいるということなのか――。
9月24日、アウトドアブランド「スノーピーク」が、行間から怒りがにじむようなリリースを公表した。(関連記事)
『インターネット上のメディアのコメント欄、Web上の掲示板、SNSなどで、本件公表とは無関係の当社、ロゴ、製品、役員や関係者の社会的評価を毀損する悪質な誹謗中傷、不正確・虚偽の内容、誤解を招く内容等を含む記事の掲載・投稿が行われている』
ここにある「本件公表」とは3日前、同社の山井梨沙代表取締役社長兼執行役員が、既婚男性との交際、妊娠を理由として辞任したことである。つまり、「不倫辞任」とまったく無関係の誹謗中傷やデマなどが増えているので、やった人間にはきっちりと落とし前をつけさせるぞ、と警告しているワケだ。企業でこの手のスキャンダルが発覚した場合、バッシングは静観することが多い中でかなり異例の対応と言えよう。
「最近の誹謗中傷は目にあまる、ぜひ毅然とした態度で臨むべきだ!」と賛同する方もたくさんいらっしゃるだろうが、一方でこのリリースにモヤモヤしたものを感じている人もいるはずだ。
ご存じのように、今の不寛容な日本では、不倫は「社会全体でリンチをして、仕事と社会的信用を奪ってもよろしい」と暗に認められている重罪となっている。そのような意味では、迅速に「罪人」の追放を公表したスノーピークは、「まあ当然だよね」と評価されてこそ、叩かれるようなことは何もしていない。実際、評論家やコメンテーターの皆さんは、「完璧なリスクマネジメント」「外部から指摘される前に先手を打って、危機管理のお手本」などとスノーピークを激賞している。
が、フタを開ければ「本件公表とは無関係」なことで誹謗中傷やデマの攻撃を受けている。「不倫辞任」をきっかけにして、この話とは直接関係のないブランドへの悪口や、ロゴや製品をディスっている「便乗犯」が大量発生したのだ。
ブランドイメージを守るために迅速な公表に踏み切ったスノーピークからすれば、こんな理不尽な話はない。その強い憤りが「異例の対応」につながったのではないか。
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