スノーピークは「法的措置」を準備してはいけない、これだけの理由:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
アウトドアブランドの「スノーピーク」が、怒りのリリースを発表した。同社の山井梨沙社長が「不倫辞任」したことに対して、全く関係のないデマが増えているので、やった人間を訴えると警告しているのだ。しかし、スノーピーク社のスタンスにもやもやしている人も多いのではないだろうか。なぜかというと……。
新たな火種を生むだけ
これまで企業危機管理でいくつかそういうケースに直面したが、大企業がカネにものを言わせて個人の言論を封殺しているように見えてしまうことがあるし、「論評の範囲」と認定されて、法廷で敗れてかえってブランドイメージが傷つくこともある。また、そこで個人に賠償請求をさせることでかえって逆恨みされて、さらに悪質な匿名の批判者になることもある。
つまり、企業がアンチに対して法的措置をしてもメリットがないし、むしろ新たな火種を生むだけだ。ならばどうすべきかというと、スノーピークが使命として掲げている「人間性の回復」だ。
ネットやSNSで企業に心ない誹謗中傷をしたり、デマを流したりしている人々にもわずかだが人間性が残っている。法律で頭ごなしに制裁をするのではなく、アンチの人間性を回復させるようなメッセージを粘り強く送り続けて、ブランドとしてのスタンスをさらに明確にして世論を巻き込んでいくのだ。
よくスノーピークは「私たちは、キャンプの力を信じています」と言っている。ならば、この問題も法律の力ではなく、「キャンプの力」で解決してみてはいかがだろう。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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