スタバ、中国で2025年までに3000店舗出店 「9時間に1店オープン」実現に疑問の声も:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/5 ページ)
米コーヒーチェーンのスターバックスが9月14日、2025年までに中国での店舗数を約3000増の9000店舗とすることなどを盛り込んだ「2025中国市場戦略ビジョン」を発表。これは9時間に1店舗を開店するペースだ。中国のコーヒー市場は拡大を続けるが、実現は難しいと心配する声が多い。
地元ブランドから追われる立場に
中国人のコーヒー市場は1999年に進出したスタバが時間をかけて耕してきた。10年前半の時点でもコーヒーはポピュラーな飲み物ではなく、1杯当たりの価格は庶民のランチの2〜4倍と高価で、ドリンクの注文方法やふさわしい服装などを紹介する「スタバ訪問マニュアル」的なコンテンツもネットに流れていた。
その後コーヒーは若者の間で徐々に浸透し、今では学生も気軽に飲む大衆ドリンクになった。21年のスタバの全世界での売上高に占める中国市場の比率は13%で、米国に次いで2番目に大きい。
スタバは中国でコーヒーを広めた「先駆者」かつ「王者」ではあるが、伸び続ける市場では強力なライバルも続々と登場し、追われる立場としてプレッシャーにさらされている。
スターバックス創業者兼暫定CEOのハワード・シュルツ氏。写真は、17年の上海ロースタリ―の開店祝賀会のもので、アリババの創業者ジャック・マー氏を案内(出典:スターバックス、Photo gallery: Celebration, joy and awe as doors open at Shanghai Roastery)
そもそも同社が19年以降、急激に出店ペースを上げたのは創業1年足らずでユニコーン(企業価値10億ドルの未上場企業)となり1年半で上場を果たしたluckin coffee(瑞幸珈琲)の猛追を受けたからだ。
スタバは「サードプレイス」としての店舗にこだわり、デリバリーに否定的だったが、luckinに対抗するために18年にデリバリーも始めた。この決断はコロナ禍で大きな助けとなり、今は毎日5000人の専属配達員が注文から平均19分でコーヒーを配達している。
luckin coffeeは20年に不正会計が明るみに出て経営危機に陥ったが、経営陣を入れ替えて再起し、22年6月末時点で中国最多の7195店を展開する。
このほか「Manner」「Seesaw」など高品質の豆を使ったスペシャルティコーヒーの中国新興チェーンも台頭し、「愛国」「個性」がキーワードのZ世代の人気を集めている。最近ではカナダ発カフェチェーン大手「Tim Hortons」がテンセントと資本提携し、中国市場を強化。さらに、「奈雪の茶」「喜茶」などティードリンク大手が、コーヒー分野に進出するとの噂も絶えない。事実、喜茶はSeesawに出資している。
関連記事
- スマホ失った「ファーウェイ」の新たな戦い方、日本人消費者の声取り入れヒット産む
ファーウェイは2020年6月のP40シリーズ以来、日本でスマートフォンをリリースできていない。企業の「顔」ともいえる商品を失い、日本の顧客における製品の価値を、より深く考えるようになったという同社が、いま日本人消費者の声取り入れ、新しい製品セグメントでヒット産んでいる。 - “世界最薄”のシャオミ、メーカー各社が折りたたみスマホでiPhoneに対抗
スマートフォン市場が踊り場を迎え、大手メーカーの出荷台数が減少する中、中国のシャオミが折りたたみスマートフォンなど新製品を一挙に発表した。2021年にスマートフォンのシェアを大きく伸ばし、EVへの進出も宣言したが、強力な競合がひしめく業界で勢いを継続できるのか。 - 無印、ユニクロ模倣の中国「メイソウ」、迷走の末「脱日本宣言」
中国雑貨チェーンの名創優品の「日本に媚びた」マーケティングがSNSで大炎上し、謝罪した。ユニクロと無印良品、ダイソーを良いとこ取りした店舗で、創業10年足らずで世界に5000店舗を出店するも、中国国内の「愛国」「反日」ムードで爆発。ここからは「第二創業」に匹敵する取り組みとなりそうだ。 - 「コロナ禍」見誤った中国火鍋チェーン「海底撈」、海外事業切り離しで立て直し? 日本でも大量出店のち休業
中国最大の火鍋チェーン「海底撈火鍋」を経営する海底撈国際控股が、海外事業部門を分社し、香港証券取引所に上場申請した。同社はコロナ禍で大量出店する「逆張り」戦略が失敗し、直近の決算で巨額赤字を計上。国内外の同時改善は難しいと判断し、重荷の海外部門を切り離したようだ。 - 中国格安EV「宏光MINI」は自動車業界のiPhone? 100万円以下のソックリEV続々登場
日本では日産自動車が軽電気自動車『SAKURA』を発売し、格安EVに期待が高まっている。本連載で1年前に紹介した世界で一番売れているEV「宏光MINI」は、累計販売台数73万台を達成。中国では二匹目のドジョウを狙い、100万円以下のEVが次々登場し、早くも明暗が分かれつつある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.