寿司の新トレンド "回らない"けど高級すぎず レトロで新しい「カタカナスシ」とは:「町の寿司屋」を現代風にアップデート(1/3 ページ)
2022年、寿司業界に新たなトレンドが生まれた。その名も「カタカナスシ」。いったいどんなものなのか。
寿司の世界で今、「寿司居酒屋」という新たなムーブメントが興っている。ヨシックスフーズ(名古屋市)が全国に300店舗近くを展開する「や台ずし」は、握り寿司をはじめ一品料理や酒を楽しめる大衆寿司居酒屋の代表格。明るい・活気のある居酒屋の雰囲気の中で、気軽に1貫から寿司を楽しめるスタイルが人気を博している。回転寿司大手「スシロー」を運営するあきんどスシローのグループ会社であるFOOD & LIFE INNOVATIONS(東京都千代田区)も、同じく寿司居酒屋業態である『鮨 酒 肴 杉玉』を全国に展開し人気だ。
このような新しいスタイルの寿司居酒屋業態が流行している背景の一つとして、ここ数年の「ネオ大衆酒場」ブームがあることは無視出来ない。昭和の雰囲気を再現した店内で、肉じゃがや煮込み、アジフライやオムライスなど、誰もが懐かしさを覚えるメニューをリーズナブルに提供。盛り付けはもちろん、グラスや器なども「写真映え」を念頭に置いた商品設計がされており、SNSでの拡散力が強い業態となっている。昨今の寿司居酒屋における基本フォーマットも、基本的にはネオ大衆酒場を踏襲したものだといえる。
寿司業態は、これまで大別すると二極化していた。銀座などに見られる、白木のカウンターに座っておまかせメニューが出てくるような1人数万円の「高級寿司」と、1皿100円ほどから楽しめる「回転寿司」だ。かつてはこれらの中間業態として、お腹の具合に応じて好きなタネやつまみを気軽に楽しめるような「町寿司」とも言うべき個人経営の寿司店があったのだが、事業継承の難しさやコロナ禍の影響、さらには回転寿司の人気によって店舗数が激減している。昨今の寿司居酒屋業態はこの町寿司を再構築したものといってもよいだろう。
新たなトレンド「カタカナスシ」とは?
人気を集める寿司居酒屋業態の中でも、今最も脚光を浴びているのが「カタカナスシ」と呼ばれる新たな業態だ。カタカナスシとは、従来の「寿司」ならぬ、遊び心あふれる創作系の「スシ」が楽しめる寿司居酒屋のことを指す。ネオンサインを店内外に使う一種のレトロ感や、日本食というジャンルを取り払ったボーダーレスな世界観が特徴だ。店名の多くがカタカナであることから、このような通称で呼ばれている。
カタカナスシは、外食産業関連の専門誌紙によって構成される外食産業記者会が毎年選出する「外食アワード2022」にも選出。スパイスワークスホールディングス(東京都台東区)の下遠野亘社長が、カタカナスシブームの火付け役として表彰された。同社は現在、国内に10店舗の寿司居酒屋業態を運営。前述した杉玉の業態開発にも関わっており、まさにカタカナスシブームのトップランナーといえる。
「開業当初の寿司業界は、ミシュラン星付きのカウンター寿司もしくは回転寿司の二極化となっており、町場の寿司店は世代交代により、どんどん閉店している状況でした。そこに憂いを感じ、若い世代の人たちに昔ながらの寿司店の使い方を知ってほしい、ミドル価格のお酒も飲める寿司店を作りたい――こうした寿司文化を後世に残したいと強く思ってカタカナスシ業態を始めました」(スパイスワークス 代表取締役社長 下遠野亘氏)
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