「賃上げの予定なし」7割の衝撃 中小企業で働く人は「安月給」のままなのか:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
城南信用金庫と東京新聞が中小企業を対象に、調査を実施した。それによると、7割以上が「賃上げの予定なし」と回答した。中小企業で働く人は、このまま「低賃金」が続くのか。
「失業者が街にあふれる」説は本当か
実はそういうマンガちっくな方法ではなく、中小企業を賃上げさせるための現実的な方法がある。それは海外では当たり前に行われていて、その効果も100%という施策なのだが、日本国内では「オトナの事情」から「禁じ手」とされている。
ここまで言えば、勘のいい方はお気付きだろう。そう、「最低賃金の引き上げ」である。
最低賃金というボトムラインをすべての業種で一律に引き上げると、最低賃金は労働者を使っている事業者はもちろんそうではない事業者も、「すみません、政府が最低賃金引き上げろって言うんで、価格に転嫁しますね」という言い訳が成り立つ。これが賃上げの好循環をつくりだすのだ。「そういうことは企業の自主性に任せるべきだ」とか言う人もいるが、その結果が今の日本だ。
賃上げを企業側の自主性に任せると、「安売り=企業努力」に取り憑(つ)かれている経営者はいつまでたっても賃上げをしないので、がんばって賃上げをした企業のほうが価格競争に敗れてバカを見てしまう。労働者を低賃金でこき使って安売りをするほうにインセンティブがつく「安さの無限地獄」に陥るのだ。
このような悪循環を断ち切るには、日本式を捨てて諸外国のように一律で最低賃金を引き上げていくしかない。さらにもっと言えば、地域格差をなくすためにも、全国一律、同一労働同一賃金が望ましい。
このような話をすると、日本商工会議所方面から、「こんな厳しい経営環境の中で、最低賃金の引き上げなどしたら中小企業がバタバタ倒産して、失業者が街にあふれて経済は崩壊だ!」みたいな絶叫が聞こえてきそうだが、動かし難い事実がある。日本以外の国では、物価上昇に合わせて中央政府が大胆な最低賃金の引き上げに踏み切っているが、そこで失業者がどうしたこうしたという話にはなっていない。
分かりやすいのは米国だ。労働政策研究のレポート「国別労働トピック」(2023年1月)にはこうある。
『全米50州のうち23州が、2022年12月から2023年1月にかけて最低賃金を引き上げた。このうち13州が物価と連動して引き上げ額を算出する方式で改定。ワシントン州やコロラド州などでは、物価上昇と同率の8.6〜8.7%のアップとなった』
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