中小企業にも賃上げの波は広がるのか:給与アップの条件(2/4 ページ)
日本企業は長年の間賃上げに消極的であり続けたが、物価高が進む中、世界の動向には大きく遅ればせながらも、大企業には賃上げの波が起こりつつある。問題は日本経済における雇用の大多数を占める中小企業である。その中小企業が賃上げを実施できるための条件は何かを探ってみよう。
でもその真実は、経営改革に効果的ないい知恵が回らないので、人事コンサルなどが提示する、賃金抑制策のための人事制度や施策に安易に飛びついていただけの例が多いのだ。
もう一つのやり口、有期雇用契約の活用と派遣労働の規制緩和による「非正規雇用者の増大」も、長年にわたる日本の給与水準抑制の大きな要因だ。これは日本社会の根を相当腐らせてしまった、アベノミクスの最悪の政策の一つだ。その動きに向けて旗を振り、経済オンチの政治家や官僚を言いくるめて、労働者から人材派遣業に富を移転させる道筋を作った人物たちこそ「A級戦犯」と言えよう。
でも人件費抑制を主たる方策としている限り、社員のやる気も帰属意識も高まらない。ましてや給与の不満を抱えた社員は、戦略的に付加価値を上げるために知恵をひねり出そうとは思わないし、転職の機会をうかがい続けているので本気では定着してくれない。これでは企業の生産性が高まるはずがないので結局、負のスパイラルに陥るしかない。
一部の企業はようやくそれに気づいたのだ。そのきっかけが今回の物価高だというのはちょっと情けないが、何もしないよりはずっとましだ。この動きがもっと広がれば日本という社会・市場が少しでも魅力を取り戻すことにつながると期待したい。
でも問題は、国内雇用の大多数を占める中小企業がこの賃上げに追随できるかだ。正直、かなり微妙なところだ。
先ほども触れたように、中小企業は取引先から価格を抑えるようにと要請されることが少なくない。原材料費が上がっても売値はそう簡単に上げられない、つまり価格転嫁しにくい。既にコスト削減が限界に来ているケースが大半だろうから、すると賃上げのための原資を確保するのが難しい。これが、中小企業で働く人の給料が上がらないどころか実質的には長期に下がり続けている、構造的要因だ。
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