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親子丼で分かれ道 なか卯は「値下げ」 吉野家は「販売見送り」 両社の戦略は?専門家に聞く(2/2 ページ)

ゼンショーホールディングス(HD)が運営する和風チェーン「なか卯」は4月6日から、看板商品「親子丼」(並盛)を490円から450円に値下げした。物価上昇で多くの飲食チェーンが値上げに踏み切る中、異例の値下げとなり大きな話題になった。

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チャレンジャーとして攻めに出た「なか卯」

――なか卯の「親子丼」値下げをどう見ましたか

森田: なか卯は攻めに出たのだと思います。牛丼・丼物のチェーン店の中で、なか卯はチャレンジャー的な立ち位置です。店舗数は462(2022年3月末時点)、吉野家の1196店舗(23年3月末時点)に比べて大きな開きがあります。

 鶏卵不足が深刻な中、なか卯が仕入れる卵は鳥インフルエンザの影響を受けていないと報じられており、供給体制も確保できているようです。卵が不足するこの時期に、卵をたっぷり使った親子丼が食べられるということは、大きな客数増を見込めます。これをチャンスと捉え、あえて値下げをすることで来客数を増やそうと考えたのではないでしょうか。


「なか卯は攻めに出た」と森田氏は話す(プレスリリースより)

――各社が値上げに踏み切る中での「値下げ宣言」は話題作りの面でも非常に巧みでした

森田: 大きな宣伝効果があったでしょうね。値下げで一杯あたりの単価は下がっても、大きな話題になれば集客が見込めます。やはり市場における自社のポジショニングは、マーケティング戦略を選択する上で非常に重要なポイントになってきます。その意味でも、なか卯はこれからも果敢にチャレンジを続けていくのではないでしょうか。

――一方の吉野家は親子丼の販売を見送り新商品を投入しました

森田: 吉野家が発表したように、鶏卵の確保が難しかったという点が大きいと思います。吉野家レベルの店舗規模だと卵の仕入れ経路の確保が非常に難しかったのでしょう。

 これをカバーする意味で、目先を変えた商品を投入したのは、非常にいい切り替えだと思います。牛丼だと食べないけれど鶏料理なら食べたいという新規顧客の獲得にもつながります。飽きられないためにシーズンごとに違うメニューを出すということは非常に重要です。


吉野家が新メニューとして販売する「焦がしねぎ焼き鳥丼」(プレスリリースより)

――親子丼でこれだけ対照的な違いが出たのは面白いですね

森田: 企業のマーケティング戦略は、社会状況や企業体力、客層などを見極めながら、自社にとって一番重要な戦略はどれか見極めて遂行していくことが最も重要になります。今回はそれぞれの企業の市場におけるポジショニングによって大きく差が出たということだと思います。

話を聞いた人

森田広一(もりた ひろかず/一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会代表理事)

東京都出身。大学時代に芸術心理学を学び広告代理店に入社、その後コンサルティングファーム役員経験を経て、2012年一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会(JMLA)を設立、代表理事就任。

広告代理店でマーケティング戦略立案、コンサルティングファームでデータ分析や各種のコンサルティング業務を経験。そこで培われたノウハウを元に人間の「感性」をひも解く独自の分析手法を確立し、そのノウハウを広く世の中に伝えるべく、JMLAを設立。各種企業のマーケティング・コンサルタントとしても活動中で、現代企業の悩み解決の実質的支援活動も継続している。


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