「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで解決? 「子供が出す音」の問題は単純ではない(1/4 ページ)
マンションにおける騒音問題には、やっかいなケースが多い。20世紀まで住宅地内の騒音問題は、「お酒を飲んで、夜中も騒ぐ人」や「静かな住宅地内で楽器を大きな音で演奏する人」など、「大きな音を出す人」によって引き起こされるケースが多かった。ところが、21世紀に入ったあたりから異なる理由でマンションの騒音問題が発生するようになった。
この記事は、Yahoo!ニュース個人に5月9日に掲載された「『子供の声は騒音ではない』と定めるだけで解決? 『子供が出す音』の問題は単純ではない」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
政府は「子供の声は騒音ではない」ことを法律で定めることを視野に入れた検討を始めた。背景には、長野市で起きた公園廃止問題があると考えられる。一部に「うるさい」という声が上がっただけで公園が廃止されるようなことに歯止めをかける狙いがあるのだろう。
子供の声が騒音扱いされることにより、親が子育てを敬遠し、少子化がさらに進むようなことを避けたいという思惑も透けて見える。
実際、「子供の声がうるさい」といわれることが子育ての妨げになっている、という指摘は以前からあった。校庭に隣接する住宅地から、そして電車やバスの中で「子供の声がうるさい」との声が出て戸惑う。そんな教師や親からの声が少なくなかったのである。
この問題を「子供の声は騒音ではない」と定めることで解決しようとしているわけだ。
確かに、子供が出す大きな声は「元気があって、よろしい」と容認する人が多いのだが、あまりに大きく、そして長時間にわたる場合は、困った問題と捉える人も出てくる。その気持ちも理解できる。
理解はできるが、子供のちょっとだけ大きめの声が短時間続いただけでうるさいと怒りだす人がいると、それはどうなのかと思ってしまう。
つまり、現代の騒音問題は、単純ではないのだ。
発生させる側に原因があるケースだけでなく、受けとる側に原因ありのケースもある。そうした複雑な事情が今回の法律の検討につながっているのかもしれない。が、「子供の声は騒音ではない」と定めるだけで、やっかいな問題が解決できるのかどうか……。
住宅、特に共同住宅であるマンションにおける騒音問題をいくつもみてきた私には疑問に思えてならない。
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