なぜ「かつや」に何度も通ってしまうのか 男性客を虜にする「100円割引券」戦略に迫る:強みを分析(3/4 ページ)
とんかつチェーン「かつや」の店舗数が増え続けている。成長してきた理由はいくつもあるが、筆者は「100円割引券」に注目する。その理由とは?
男性客を虜にする100円クーポン
ここからは、かつやが長期で成長し続けた理由をまとめよう。かつやの戦略を要約すると、(1)男性客ターゲット戦略、(2)圧倒的な安さ、(3)クーポン戦略の3つにまとめられる。
まず、客層のターゲットについて説明しよう。10年以前は女性を対象としたヘルシーなメニューを提供していたが、業績が伸び悩んだこともあって後にこれを撤回した。今のメニューを見るとカロリー表示は無く、サラダセットのようなヘルシーさを訴求した商品はない。筆者もお昼時に寄ってみたが、客のほとんどが男性だった。
次は、安さについてだ。チェーンでかつや以上に安くとんかつメニューを提供できる店はそれほどないだろう。客層は異なるが「とんかつ和幸」「新宿さぼてん」が1食1000円以上するのに対し、かつやは1000円以下で済む。油を中性化して揚げカスを自動で取り除く独自のオートフライヤーを導入しており、通常のとんかつ屋のように頻繁に油をとりかえる必要はない。作業の簡素化と高速化によって低価格化を実現している。
クーポン戦略に関してはどうか。かつやでは500円以上の会計で100円割引券が提供される。メインメニューの中で一番安い「カツ丼(梅)」でも572円であるため、割引券を使えば毎回100円引きのループが可能となる仕組みだ。割引券の再利用率は50%を超える。しかも、決算資料でも100円割引券による顧客化を掲げており、クーポン戦略が有効に機能しているようだ。
とはいえ、他社もさまざまなクーポンを提供している中、なぜかつやの100円割引券が特に効果を発揮しているのだろうか。調べてみるとこれを裏付ける理由が複数見つかった。
まず、割引券を単純に100円として使える点に魅力がある。クーポンには特定メニューだけを割引するものや、1品を追加するものなどさまざまな種類があるが、ぐるなびの調査によると、支払総額からの割引券が最も消費者をひきつけるそうだ。同調査では、回答者の69.3%が総額からの割引券を「また利用したい」と答えている。一方、特定メニューだけを割引するクーポンを「また利用したい」と答えたのは32.3%しかない。
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