コストコさん、うちにも来て! 激化する誘致合戦 出店ラッシュはいつまで続く?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/6 ページ)
各地の自治体が、熱心にコストコを誘致している。どういった背景があるのか、各市町村の担当者に聞いた。モテモテ状態はいつまで続くのか。
全国の自治体で、「コストコ」を誘致する動きが加速している。
コロナ禍以降にオープンしたのは、全国に6店。2020年は木更津倉庫店(千葉県木更津市)。21年には、熊本御船倉庫店(熊本県御船町)、石狩倉庫店(北海道石狩市)、守山倉庫店(名古屋市)。22年には、壬生倉庫店(栃木県壬生町)。23年に明和倉庫店(群馬県明和町)がオープンしたばかりだが、今夏に門真倉庫店(大阪府門真市)も控えている。
24年以降には、三重県亀山市、沖縄県南城市、滋賀県東近江市、山梨県南アルプス市、福岡県小郡市と、続々オープンが決まっている。
会員制のディスカウントストアとして人気が高いコストコは、ロードサイドに倉庫型の大規模店を出店。休日にはしばしば、周辺の道路に大渋滞を引き起こす。周囲に何もない田舎にコストコが出店した後、チェーンのコンビニ、飲食、アパレル、自動車販売、自動車用品などの郊外店が周囲にできる可能性が高い。地域住民にすれば静かに暮らしていたのに、急速な開発で街の風景が変わってしまい、喪失感を持つ人も少なくない。
そのため地域住民から、コストコ出店に対する反対運動が起こることも多い。売り上げを奪われるのを懸念する地元の商店街のみならず、コストコがガソリンを安売りするので、給油のサービスステーションからも反対の声が上がるケースもある。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況が変わった。公共交通機関を使うより車で移動して、1回の買物でなるべく多くのものを買って、人と接触する機会を減らした方が良いとされた。そうなると、新型コロナと共存する「新しい生活様式」のショッピングに、コストコは非常に適した店と見なされるようになった。
コロナ前に比べても、コストコは日本人の生活により身近になり、追い風が吹いている。
コストコを経営するコストコホールセールジャパン(千葉県木更津市)では、高速道路ICの近く、周囲にイオンモールなどの大規模郊外型ショッピングセンターがない場所を選んで、出店しているように見える。
そうすることで、車の渋滞、地元商店街とのマーケット競合を、極力回避しようと考えている。
一方、誘致に積極的な市町村は、自治体の域内に大規模郊外型ショッピングセンターがなく、隣接した自治体にあるために、地元の商業が衰退しているケースが多い。
住民が隣接する市町村にこぞって買物に行く光景を見続けて、首長をはじめ役所・役場の職員や地元の商工会は苦々しく思っていた。コストコを誘致して一発逆転、商業の発展につなげようとしているように見える。
コストコは全国に32店あるが、無限に出店できるわけでなく、自ずと店舗数の限界がある。すでに近隣に出店していれば、もう1店というわけにもいかない。限られたパイを巡って、誘致合戦が激化している。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - なぜ女子の半分が泳いでないの? ジェンダーレス水着の開発者が語った“忘れられない光景”
フットマークのジェンダーレス水着が話題になっている。性の悩みだけでなく、さまざまな理由で「肌を隠したい」生徒のニーズに対応するのが狙い。開発者にその背景を聞いた。 - トイレ利用後に買い物しない人が約4割!? ローソンがトイレの扉にアートステッカーを貼った背景
全国のローソン店舗のトイレ付近に、アートステッカーを貼る取り組みを始めた。トイレをいつもきれいに使ってくれる人への感謝を示す。背景にあるコンビニトイレの課題とは? - ファミレスは危機に陥っている!? サイゼリヤとガストで明暗が分かれたワケ
ファミレスの2大巨頭「サイゼリヤ」と「すかいらーくHD」。すかいらーくの主力であるガストが、サイゼと比べて業績面で苦戦している。背景には何が? - なぜ「かつや」に何度も通ってしまうのか 男性客を虜にする「100円割引券」戦略に迫る
とんかつチェーン「かつや」の店舗数が増え続けている。成長してきた理由はいくつもあるが、筆者は「100円割引券」に注目する。その理由とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.