“安いニッポン”の救世主になるのか 「価格変動制」はわれわれの心も変える:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
需要が少ないときは価格を安くして、需要の多いときは高くする――。そんな「価格変動制」が着々と広まっている。価格が変動する最大のメリットは何か。それはわれわれの価値観を変えることであって……。
需要が少ないときは価格を安くして、需要の多いときは高くする――。そんな「価格変動制」(ダイナミックプライシング)が着々と広まっている。
まず、もはや常識になりつつあるのがイベントやテーマパークだ。プロ野球やJリーグ、東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオ・ジャパンなどは以前から導入されているが、ここにきてなんと徳島の「阿波踊り」にまで導入されるという。全国から多くの人が訪れる初日を除き、公演によっては空席が目立つこともあり、客の入りが少ないことが見込まれる場合、価格を下げて足を運んでもらいやすくするそうだ。
交通機関でも始まっている。今年5月には国土交通省がタクシー運賃で導入。現在、鉄道などの公共交通機関での導入も検討されており、“日本名物”である殺人的満員電車の解消につながるのではと期待されている。
一方、今後急速に広まっていくと思われるのが「外食」だ。日本マクドナルドが東京、愛知、大阪などで「都心店」と「準都心店」を設定し、これらの店で一部商品を10円から90円値上げをしたのだ。例えば「ビッグマック」の価格は通常の店では450円だが、準都心店では470円、都心店になると500円と50円も高くなる。
ご存じのように、日本の産業界は基本的に「横並び」が好きで、業界最大手をベンチマークにしている会社が多い。つまり、マックがこういう動きをすれば当然、競合も追随するし、大手のファミレスや居酒屋チェーンなどにも広がっていく可能性が高い。
ただ、そんな「価格変動ブーム」ともいうべき動きを警戒している人は多い。「ダイナミックなんちゃらとか言って結局はステルス値上げだろ!」と怒っている人も少なくない。また、公共交通機関に導入されることで「公共サービスが利益を追及して弱者を切り捨てするとは何事だ!」と憤りを感じている人もいらっしゃる。
お気持ちは痛いほど分かる。ただ、悪いことばかりではない。価格変動というカルチャーが社会に普及していけば、多くの日本人を苦しめている「安いニッポン」という問題も多少なりとも解消していくかもしれないのだ。
関連記事
- アメリカのスタバ時給1900円から考える「安い日本」
コーヒーチェーンを展開する米スターバックスが、米国で時間給社員の平均賃金を来夏に平均で17ドル、現在の為替レートで約1900円まで引き上げることが報じられた。日本でも高齢化によって人手不足は深刻な状況にあるが、賃金水準は30年前から横ばいだ。一方で、日本は食料の半分を、エネルギーの大半を輸入に頼っている。現在の傾向が続けば賃金は低く物価は高い状況、つまり「安い日本」から「貧乏な日本」になってしまう日も近い。 - 「縮むニッポン」に適したビジネスは何か “盗まれない”最強の産業
人口が急激に減少していることを受け、さまざまなサービスが縮小している。多くの業界が厳しい環境に置かれているが、そんな中でも他国から「盗まれない」産業がある。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.