いきなりか準備をしてからか 書き始めるのはどちらがいいのか:伝えたいこと(3/3 ページ)
いきなり書きはじめたほうがいいのか。それとも、なにかしらの準備をしてから書きはじめたほうがいいのか──。文章の書き方を語るときに、必ず議論されるテーマのひとつだ。
「伝え方」の要は「伝えるべきこと」の自覚にある
いまのお話は、もちろんプロと呼ばれる人たちの仕事にもあてはまることです。
例えば、アーネスト・ヘミングウェイが書いたといわれる「6単語の短編小説」にも、同じような思考の存在をうかがうことができます。
「売ります。赤ん坊の靴。未使用。」
(For sale: baby shoes, never worn)
原文はたった6つの単語。しかし、これだけで赤子を亡くした親の切なさがしっかりと伝わってきます。
「書き方」は確かにうまい。秀逸です。
でも、たった6語で「うまく書ける」のも、もっといえば6語という短い表現に集約できるのも、書く前の時点で「伝えるべきこと」がはっきりとイメージされているからにほかなりません。
「伝え方」の要は、やはり「伝えるべきこと」の自覚にあるということです。
「伝えるべきこと」がきちんと定まっていなければ、そもそも「伝わる伝え方」になりづらい。もっといえば、「伝えるべきこと」を自覚するから「伝え方」が分かる、伝えられるようになる、ともいえます。
【まとめ】
やっぱり、いきなり書きはじめてはいけない。
この記事は、『「伝え方――伝えたいことを、伝えてはいけない。』(松永光弘/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
松永光弘(まつなが・みつひろ) 編集家
1971年、大阪生まれ。これまで20年あまりにわたって、コミュニケーションやクリエイティブに関する書籍を企画・編集。クリエイティブディレクターの水野学氏や杉山恒太郎氏、伊藤直樹氏、放送作家の小山薫堂氏、コピーライターの眞木準氏、谷山雅計氏など、日本を代表するクリエイターたちの思想やものの考え方を世に伝えてきた。自著に『「アタマのやわらかさ」の原理。クリエイティブな人たちは実は編集している』(インプレス、編著に『ささるアイディア。なぜ彼らは「新しい答え」を思いつけるのか』(誠文堂新光社)がある。
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