「伝えたいこと」を伝えれば、本当に「伝わる」のか
ここまで3回の記事でお話ししてきたことをまとめると、はっきりと分かっているから、はっきりと伝えることができる。
だから、「伝えるべきこと」をあらかじめ自覚することが大切。
こう聞いて、「そうか。じゃあ、まずは“伝えたいこと”をとにかく研ぎ澄まそう」と思ってくださった方。
ひとまず、方向性はそういうことです。
でも、その先──ただ理解してもらうだけでなく、相手に納得してもらったり、賛同してもらったり、共感してもらったりしたいのであれば、実はもう少し考えなくてはいけないことがあります。
それは、「伝えたいこと」を伝えれば、本当にそれで「伝わる」のか、ということ。
世間では「自分が伝えたいことを伝えるべきだ」とよくいわれます。
でも、本当にそれでいいのか。それで通用するのか……。
結論からいうと、残念ながら、そういつもうまくことが運ぶわけではありません。
実際のコミュニケーションでは、「伝えたいこと」を伝えても相手に伝わらないことが少なくありません。
一番分かりやすい例のひとつは説教でしょう。
例えば、親が子どもに「勉強しないと、ろくな大人になれない」と伝えたいとする。もしくは「自分は勉強しなかったことを後悔している」と伝えたい。
そのまま伝えたところで、子どもが納得したり、共感したりすることはまずありません。
「伝えたいこと」を伝えても、伝わらない。
なぜでしょうか。
最大の原因は、実は伝えるコミュニケーションの構造そのものにあります。
そもそも、伝え手の「伝えたいこと」が、受け手にすんなりとは受け入れられづらい構造のなかで、私たちはコミュニケーションをしているのです。
もっといえば、「伝えたいこと」をそのまま伝えても、納得してもらったり、共感してもらったりするどころか、受け手との間に「コミュニケーションの橋」が架からない可能性すらあります。
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