「伝えたいこと」を投げても、なぜ「伝わらない」のか:伝えたいこと(2/3 ページ)
受け手自身が聞こうと思えば聞くけれど、聞きたくなければやめてしまう──。伝え手の立場で考えると身勝手にも思える話だが、これはふだん私たちが誰しもやっていることで……。
「いいこと」をいっていれば伝わるのか
「伝えたいこと」と「伝えられたいこと」は違う──。
つい先日も、そのことを痛感させられる出来事がありました。生成型AIのことを知らなかったある中学生に、スマートフォンでChatGPTをつかわせてあげたときのことです。
彼がAIにいきなり投げかけたのは、「親がうざい。どうしたらいい?」という言葉でした。なかなか辛辣(しんらつ)ですが……、これに対してAIは、すかさず次の答えを返してきました。
「親との関係に悩むことは、多くの人が経験することです。まずは、親の行動がどのようなものであっても、彼らがあなたを愛していることを忘れないでください。彼らの行動には、あなたが気づかないような背景や理由があるかもしれません」
驚いたのは、あとでいろんな人(大人)にこの返答を見せたところ、絶賛する意見が多かったことです。
「お手本にしたい」「子どもに読ませたい」「学校の先生も参考にすべきだ」などと、みな思った以上の高評価でした。
確かにAIの返答は、いいことをいっているとは思います。
でも、忘れてはいけないのは、この言葉はその中学生に投げかけるもの(伝えるもの)だということです。
本当にこれで彼は納得するのか。「伝わる」のか。
実際のところは……、みじんも納得せず、でした。「AI、うざい」といったなり、彼はすぐさまスマートフォンを置いてしまいました。
大人たちには、AIの返答がすぐれた投げかけのように見えたのでしょう。しかし、それは自分たちが「伝えたいこと」にすぎません。
いくら「いいこと」「正しいこと」をいっていても、「伝えたいこと」そのままを、相手が受け入れてくれるとは限らないのです。
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