売上苦戦していた「しまむら」なぜ復活? 「しまパト」「しまラー」という画期的システムが果たした役割:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
一時期は売り上げが伸び悩んでいた「しまむら」。しかしここ数年で業績が大きく伸びた。躍進の背景にある「しまパト」「しまラー」とは?
「しまパト」「しまラー」が有名
全国にロードサイド店をメインとして2000店以上を展開するしまむら。ブランド別の店舗数(23年2月末期)の内訳は、「しまむら」1418店、「アベイル」312店、「バースデイ」316店、「シャンブル」113店、「ディバロ」16店、となっている。
年間の売上高は6000億円を超え「ユニクロ」「ジーユー」のファーストリテイリングに次いで国内アパレル企業では2位につけている。
ファーストリテイリングが世界26の国と地域に進出しているグローバル企業であるのに対して、しまむらは台湾に進出しているものの、それ以外は全て国内に店舗がある。しまむらは現状、極めてドメスティックな展開をしている。
しまむらの特徴として「しまパト(しまむらパトロール)」の存在が挙げられる。毎日のようにしまむら店舗を訪れて、掘り出し物を物色する「しまラー」と称される熱烈なファンを多数抱えている。
100円ショップの「セリア」「ダイソー」、300円ショップの「スリーコイン」、格安スーパーの「業務スーパー」、グロサリーストアの「カルディ コーヒーファーム」などと並んで、ファンたちのSNSによる発信が盛んだ。絶大な影響力を持つインフルエンサーも多く、投稿内容によって商品の売り上げが大きく左右されることもしばしばだ。
しまむらのうまさは、インフルエンサーの意見を吸い上げ、商品に反映していることだ。同社の公式Webサイトを見ると、トップページの下の方に『みんなの「#しまぱと」活動報告』という写真投稿コーナーがある。購入した商品の写真を撮って、X(旧Twitter)やInstagramにアップすると「しまパト隊員」になる。
フォロワー数が増え、アクセスが増えたしまパト隊員がインフルエンサーとして認知されると、今度はしまむらの本部からコラボ商品を出さないかとお声が掛かるケースもある。
「terawear emu」という商品群は、着るだけで気分が高まるレディースの服や雑貨で構成されている。プチプラコーデで人気のママインフルエンサー、TERA氏と共同開発した。プチプラとは、プチプライスの略で、安価という意味だ。
つまり、あまりファッションにお金をかけずとも、毎日のようにしまむらに通い、買物をしてセンスを認められると、商品開発の一端に加わることができる。
一般市民の誰もが、商品の写真投稿をきっかけに、いわばデザイナーやアパレル企画者になれるという、画期的システムなのである。
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