なぜスーパーのレジで“PayPay渋滞”が起きるのか 大手流通の存在がチラリ:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
スーパーでQRコード決済「PayPay」を使うと、時間がかかることがある。店員さんは急いで作業しているものの、レジには長蛇の列ができることも。便利なサービスであるはずなのに、なぜ渋滞が起きてしまうのか。
立派なデジタル戦略を
こういう日本企業の「戦略のために現場が犠牲になる」という病が引き起こす問題を、筆者はこれまで何度も見てきた。そのせいもあって、PayPay渋滞で疲弊する店員の姿を見ると、iAEONというデジタル戦略を重視するがゆえの犠牲になっているのではないか、と心配してしまうのだ。
もちろん、筆者の考えすぎかもしれない。そこで、イオングループの「大本営」でデジタル戦略を進めるエリートの皆さんにご判断をしていただきたいと思う。お忍びで店舗に行って、実際にレジでPayPayを使ってみてはいかがだろうか。
今日もどこかのスーパーで渋滞が起きている。そのたびに、現場のレジ担当者は専用端末を引っ張り出して、キャッシュレス時代とは思えないほど手間をかけて会計をしている。そして、イラつく客に頭を下げ、場合によっては文句を言われることもある。
デジタル戦略も確かに大事だ。データの活用、グループのスケールメリットを生かしたワンストップでの買い物体験を、ぜひ実現していただきたい。しかし、その前に今この瞬間、現場で働く人々の負担を減らすようなロジスティックスを提供することも立派なデジタル戦略のような気がするのだ。部外者が生意気なことを言って恐縮だが、スーパーやコンビニで働く人たちは、社会インフラを支える「宝」だということを、われわれはコロナ禍で思い知ったはずだ。
日本を代表する巨大小売グループとして現場の負担軽減、ぜひ前向きにご検討いただきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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