処理水をめぐって“愛国サンドイッチ”の危険性 企業が「日本人」とうまく接する方法:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
日本のホテルや飲食店に、音声読み上げソフトを用いてこんな嫌がらせ電話がかかってきている。原発の処理水をめぐって、バッシングが起きているわけだが、中国ビジネスを展開していくうえで気をつけなければいけないことがある。それは日本人で……。
「こんにちは、あなたたちはどのように過ごしていますか? あなたたちは昨日、汚染水を飲みましたか? おいしかったですか? まだ健在ですか?」
「私たちは富士山の爆発を期待して、あなたたちがそれと一緒に存亡することを望みます。さようなら、二度とお目にかかれません」
日本のホテルや飲食店に、音声読み上げソフトを用いてこんな嫌がらせ電話がかかってきている。その大半が、中国の国番号「86」で始まっているという。福島第一原発が処理水を海洋放出したことを受けて、中国の動画投稿者が、日本の役所や飲食店にいたずら電話をしている映像をアップしたところ、またたく間にバズって真似をする人が続出しているのだ。
専門家によれば、これは中国共産党が「処理水放出」にかこつけて大衆の“ガス抜き”をさせる、いつもの手段だという。ご存じのように、中国では政権批判などが禁止されている。そこで、定期的に大衆のストレスを発散してやらなければ、大規模な暴動や国家転覆運動などを招いてしまうということで、「反日」をうまく活用してきた。
今、中国は不動産大手・恒大集団の破産申請が引き金で、リーマンショック級の金融危機が起きるのでは、といった声も出ている。そうなると当然、政権に対する不満や不信感も募ってきてしまう。そこで日本の処理水放出を批判することで、民衆の怒りを「日本」へと誘導して、政権批判をかわしているというわけだ。
ただ、ヒステリックに騒いでいる中国人はほんの一部だし、嫌がらせ電話もほどなくして鎮静化していくだろう。世界で処理水について騒いでいるのは、中国と北朝鮮、そして韓国の一部野党や市民団体だけであって、西側諸国では「健康や環境への影響は取るに足りないレベル」(仏・フィガロ紙)と冷静に受け止めているからだ。
こういう世界の状況が分かってくれば、この手の嫌がらせも減っていくだろう。実は中国の人はわれわれが思っている以上に、日本のニュースをチェックしているのだ。
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