人か、ロボットか 「餃子の王将」と「大阪王将」が異なる一手 厨房で起きている見過ごせない変化:長浜惇之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
人手不足に悩む飲食業界。これまで近しいポジショニングだった餃子の王将と大阪王将では調理技術を巡って違いがみられる。人か、ロボットかーー競合などの状況分析を基に現在地をまとめた。
売り上げ好調も、けん引役は食品事業
イートアンドホールディングス全体の業績は、決算月の変更があったため単純に比較はできないものの、好調を示す。23年2月期の売上高は約330億円(前年同期比7.0%増)で過去最高。コロナ前の19年3月期は約291億円だった。23年2月期の営業利益約9億円(同9.7%増)も過去最高だ。
しかし、その内訳を見ると外食事業がけん引しているわけではないようだ。冷凍餃子などの食品事業と外食事業の売り上げが、18年3月期にはともに140億円ほどで拮抗していたものの、直近ではパワーバランスに変化が見える。23年2月期では食品が約200億円に対して、外食が約129億円。食品の割合が高くなってきている。コロナ禍で巣ごもり消費が拡大したことで、冷凍食品が伸びた一方で外食が苦戦を強いられた結果と見える。しかし、冷凍食品事業はブランド力が強い外食チェーンがあってこそなので、外食の復興にも力を入れている。
大阪王将では、工場で麺・餃子の皮と餡(あん)を製造しているが、野菜や肉を切る作業は店舗で行う。餃子も、別々に送られてきた皮と餡を店で包んでいる。現状の調理は職人の技術に依存する部分が多く、キャリアアップのために資格制度を導入しているが、どうしても料理にブレが生じていた。そうした課題解決に、調理ロボットを役立てる。
テークアウト需要を追い風に成長する餃子の王将
一方、王将フードサービス(京都市)が全国に732店(23年3月期末時点)を展開する餃子の王将は、餃子を中心にコロナ禍の間もテークアウト需要が多く、比較的好調に推移した。
23年3月期の売上高は過去最高の約930億円(前年同期比9.7%増)となり、営業利益も過去最高の約79億円(同14.7%増)となった。今期(24年3月期)に入ってからも、8月までの直営店・既存店売上高が全ての月で前年同期を超えている。
さて、同社が好調の要因の一つに挙げているのが「調理技術の向上」である。18年、京都市内の本社に「王将調理道場」を設置。店長を対象に、メニューの調理法をあらためて教育し、料理人としてのスキルアップを図っている。
人間が料理する以上、同じ料理を作っても、どうしても味のブレが生じる。そこは許容して、ある一定の水準を設け、調理技術をブラッシュアップしていくことを主眼としている。店長の料理がしっかりすれば、スタッフにも教えられるという観点から、まずは道場で店長を鍛錬している。
コロナ禍では、感染拡大防止のため本社に店長たちを集める形ではなく、オンラインで道場を開いた。このように、調理技術を磨き上げる仕組みができているのが、餃子の王将の特徴だ。
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