「信者ビジネス」は嫌われているのに、なぜイケてる企業は“テキトーな名前”をつけるのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「アップル信者」「アムウェイ信者」といった言葉があるが、ビジネスの世界で「信者をつくる手法」は成功の法則とされている。しかし、日本では……。
マインドコントロールの金太郎飴状態
これはつまり、マインドコントロールはどんな相手でも糾弾できる一方で、「免罪符」にもなる、ということを日本政府が暗に認めたようなものだ。日々さまざまな詐欺などの悪事を編み出す裏社会の人間が、こんなおいしいネタを放っておくはずがない。
例えば、悪質ホストが社会から制裁を受けそうになったとき、自分も「被害者」だと訴えて罪逃れをすることだって可能だ。ホストクラブの中で厳しいノルマで精神的に追いつめられて、「若い女性客に法外なカネをむしり取るべきだと店長からマインドコントロールされた」とか訴えるのだ。すると、今度はその店長も「新人のときに私も先輩からマインドコントロールされ、下の連中にきついノルマを強いるように操られていたので被害者だ」と訴える。
つまり、マインドコントロールの金太郎飴状態で、自分がやったことの責任をウヤムヤにして逃げるテクニックが、裏社会からサラリーマン社会から教育現場まで流行するのだ。いわば、「個人意志」というものが軽視されていく、「1億総マインドコントロール社会」になるのだ。
「はあ? おかしな妄想で不安をあおるな! 貴様のようなデマをまき散らすライターは成敗してやる」とネットやSNSでボロカスに叩きたくなっている人もいらっしゃるだろうが、実は私ももともとこんな記事を書きたかったわけではない。
カルトブランディングについて紹介しようと思って書いているうちに筆が乗って、自分の意志とは関係なく気がつけばこんな話になってしまった。これは恐らく何者かにマインドコントロールされているに違いない。
「哀れな洗脳被害者」の戯言なので、そうカッカせず大目に見ていただけないだろうか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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