水を温めただけの「白湯」が、なぜ想定の3倍も売れたのか アサヒの“着眼点”が面白い:水曜日に「へえ」な話(1/5 ページ)
アサヒ飲料の「白湯」が売れている。水を温めただけの商品がなぜ売れているの? と思われたかもしれないが、ヒットの背景に……。
「白湯」の読み方は?――。
「いきなりなんだよ。クイズかいな」などと思われたかもしれないが、某メディアでこのような問題が出されていた。答えは「しろゆ」でも「はくゆ」でもなく、「さゆ」である。
ご存じのとおり、白湯とは水を沸騰させたお湯のこと。さまざまな情報を見ると、白湯には冷え性を改善する効果があったり、胃腸が温まって消化を助けたり、といったことが書かれている。クイズに出題されるほどやや難解な漢字ともいえるわけだが、つくり方は簡単である。コップに水を注いで、ポットや電子レンジで50〜60度に温めれば完成だ。
手軽につくれる料理の代表格として、インスタントラーメンが挙げられる。水を沸騰させて、めんをほぐして、粉末(または液体)のスープを入れるだけ。いや、もっと簡単なモノがある。インスタントコーヒーの場合、水を沸騰させて、コーヒーを入れて、かき混ぜるだけ。
どちらも「ひと手間を加える」という表現が似合わないが、水を沸かせただけのモノを販売したところ、計画の3倍ほど売れた商品がある。アサヒ飲料の「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」(以下、白湯)だ。
それにしても、なぜ“お湯”を販売したのか。商品開発に携わった鈴木慈さんは、会社の人に「白湯を開発してはどうか」と提案したところ、次のような声が返ってきた。「天然水を温めるだけでしょ。売れそうにない」「水を温めるくらい、自分でやるのでは」と。
筆者がもし鈴木さんの上司であれば「なにそれ。無理、無理」とダメ出しをしているはず。ちょっと話がそれてしまうが、温めるのではなく、冷やすのでもなく、「常温」はどうか。これも「無理、無理」である。ひと手間を加えていないし、そもそもスーパーなどでは常温で売っている。このように考えると、やはり白湯は「却下」である。
いや、筆者以上にアサヒ飲料は“お湯”に、強いアレルギー反応を示したかもしれない。というのも、同社は2014年にほぼ同じ商品を販売している。商品名は「アサヒ 富士山のバナジウム天然水 ホットPET340ml」。このときも「カラダによさそうな温かいお湯は売れるのではないか」などと考えたそうだが、目標を達成できず、ワンシーズンで終売したという苦い経験があるのだ。
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