「コロナ禍以前」に復活の小売業 識者が2023年のホットトピックを振り返る:インバウンドも回復(1/4 ページ)
コロナ禍が収束の兆しも見せ始めた2023年。小売業の各社は、どんな取り組みを行い、またどういった状況にあるのか。小売業に詳しい著者が、各業界別に2023年の動向を振り返る。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
本年も終わりが見えてきたこのタイミングにて、2023年における小売業の動向を振り返ってみたいと思います。まず、コロナ前(19年)と比較して各業態がどのような推移を辿ってきたかを、グラフで確認しましょう。
19年の市場規模を100とした場合、伸びが顕著なのはECです。22年には117と、大きな成長を見せています。以降はスーパーマーケット(114)、ドラッグストア(112)が続きます。ホームセンター・コンビニエンスストアはそれぞれ101。百貨店は20年に4分の1ほど減少していますが、22年には94にまで回復しました。23年にはさらにインバウンドが復調したことで、今後の好業績に期待が集まります。
23年のインバウンドは、10月時点で19年対比100.8%、中国を除くと127.9%です。既に19年を上回る訪日外客数を記録しており、百貨店のみならず、ドラッグストア・GMS・コンビニエンスストアなどの市場を後押しすることでしょう。
店舗再編に臨むコンビニ セブンが「一人勝ち」
今度は業態別に、より細かく数値を確認してみましょう。まずはコンビニエンスストアです。図表左のグラフは各年における主要企業の店舗増減数、右は売上推移と営業利益率を示しています。
コンビニエンスストアの大手3社は、コロナ前から出店による売上拡大に限界を迎えていました。この傾向は続いており、23年10月時点では3社とも閉店数が出店数を上回っています。3社とも営業利益率こそ維持しているものの、19年から年平均成長率(CAGR)が伸びているのはセブン-イレブン・ジャパンのみです。
同社は平均日販で70万円超えを記録するなど、店舗当たりの収益性も他社を圧倒しています。スムージーやセルフ紅茶の展開などによる女性ターゲットの取り込み、イトーヨーカ堂とのパートナーシップに基づく新コンセプト店舗「SIPストア」、さらにリテールメディア施策などが既に進行しており、今後の新たな事業やカテゴリー展開に注目が集まります。
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