なぜChatGPTは爆発的にヒットしたのか
爆発的に利用が広がったChatGPT。その大流行の要因は、以下3つだと考えます。
(1)対話という人間的なインタフェース
(2)API公開によるビジネス利用
(3)かゆいところに手が届く機能進化
(1)対話という人間的なインタフェース
ChatGPTが衝撃的だったのは、言語モデルを「対話」という、極めて人間的なインタフェースで使える形にしたことです。さらに、それまで用途別に作られていたAIに対して、AIが汎用的に使える可能性を示したことにあります。
言語モデルとは、大量の言語データを学習して、一連の単語の並びから次の単語を予測するという考え方です。AIを自然言語(コンピュータ向けのプログラミング言語のような人工言語との対比でこう呼ばれています)の処理に使おうとする試みのベースになるものです。
これまでAIは、一部の人間にしか親しみがない存在でした。ChatGPTのような人間と対話するAIは、まさにSF映画に出てくるAIと重なるため、誰でも簡単にイメージ、体感できるようになりました。
(2)API公開によるビジネス利用
さらに、APIを公開し、企業が自社のサービスやアプリケーションに機能としてChatGPTの対話機能を組み込めるようになり、世界中でさまざまな取り組みやサービスが広がることとなりました。
(3)かゆいところに手が届く機能進化
ChatGPTのベースとなる言語モデルは、当初のGPT-3.5からGPT-4、さらにGPT-4 Turboへと進化しています。この進化で果たされたことの一つが、プロンプト(AIへの指示や質問)に入れられるトークン数(日本語では、ほぼ文字数と同じ意味)の増加です。
23年3月の時点で提供されていたGPT-3.5ではトークン数が小さく、グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)でAIを活用したサービスを開発する際も、わざわざプロンプトを日本語ではなく英語にして効率を上げるなど、涙ぐましい(?)工夫をしていました。
さらに、画像も扱えるようになりました。
ここで、最近新しくなったグロービスのコーポレートロゴについて、ChatGPTに新旧ロゴの違いを説明してもらいましょう。
ChatGPTは、デザイン、フォント、カラーの3つの観点から、新旧ロゴの違いを明確に説明しています。例えば「両方とも青色だが、旧ロゴの青はやや濃いめ。新しいロゴは明るい青」「旧ロゴはフォントが太く一定で、伝統的な印象」などと回答しており、2つのロゴの違いをしっかり捉えていることが分かると思います。
また、ChatGPTのアプリでは、すでに音声認識と音声合成を利用することで音声でやりとりができるようになっていて、「見る、聞く、しゃべる」ことが可能です。
このように、当初は言語だけしか扱えなかったChatGPTが多様な入出力を扱えるようになってきています(マルチモーダル化)。今後は、ロボットや各種対人サービスへの応用の可能性が広がりそうです。
ここまで、今年1年を振り返り、ChatGPTが爆発的ヒットを記録した要因について解説しました。続く中編では、ChatGPTを取り巻く24年のトレンドと、今後のビジネスへの影響について解説します。
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