ChatGPTは事業活動の「どこ」に組み込まれるべきか
ChatGPTの大流行の中で「自社にはどう生かせるのだろう」と考えたものの、なかなかイメージが湧かない……という人も多いのではないでしょうか。
これからますます進化するであろう生成AIを、チャンスを逃さず活用していくために、企業の事業活動の流れ(購買→製造→物流→販売/マーケティング→サービス、さらにそれを支える人事、経理などの間接部門といったバリューチェーン)から、その活用の可能性を考えてみましょう。
例えば家電メーカーでは、実際にモノを作ったり運んだりする物理的な作業以外では、ほとんどの仕事は情報(言葉やデータ)のやりとりや話し合いで進められます。これには新しい商品のアイデアを考えたり、それを売ったり、宣伝したり、買った人にサポートを提供する活動が含まれます。
また、これらを支えるための採用活動やお金の管理なども同様です。レストランチェーンでも、調理や料理の提供といった物理的な作業以外には同じことが言えます。加えて、サービス業では人との関わりがさらに大事になります。特に、スタッフの管理や接客では、言葉によるコミュニケーションが極めて重要です。
つまり、大半の企業活動が実は自然言語、あるいはデータのやりとりをもとに行われていると言えます。自然言語やデータの処理は、いまや生成AIの得意とするところです。極めて広範囲に及ぶ企業活動で、生成AIの活用の種があることが予想されます。
それでは、具体的にどのような活用があり得るのでしょう。生成AIが得意な「対話⇔生成」という機能面、さらに対象が「エンドユーザー向け⇔業務向け」という2軸で生成AIを使ったアプリケーションを例示してみました。
私が勤めるグロービスでは、生成AIの登場以前から、経営大学院の入試の書類審査の支援や、記述式レポートの採点支援などにAIを活用してきました。そして、生成AIの登場で、AIのユースケースはさらに大きく広がりつつあります。
例えば、生成AIを使った対話型の経営教育サービス(GAiChaL: GLOBIS AI Chat Learning)を開発し、経営大学院が提供するプログラム「ナノ単科」で導入しています。グロービスがずっと大事にしてきた対話型の教育と生成AIの相性がいいこともあり、ChatGPTのAPIが公開された3月1日にすぐに開発を決定し、3月3日にはプレスリリースで開発を宣言しました。そして3月末には、上記のGAiChaLとして、導入を実現しました。
AI時代、私たちに問われる能力
アプリケーションのベースとなるハードウェアや言語モデルの開発には大規模な投資が必要で、誰でも戦えるという状況ではありません。
一方アプリケーションは、生成AIのおかげで、極めて高速、かつ比較的低いコストで開発が可能です。従来AIを使ったサービス・アプリケーションの開発は、通常半年以上かかるものでしたが、生成AIのプロンプトを使うことで、少なくとも動くものを作るのであれば、数時間から数日と大幅にハードルが下がっています。
さらにアプリケーションのタイプも、「企業固有の課題設定×企業固有のデータ×生成AI」のかけ合わせで、無数の可能性があると言えます。結果、ChatGPTをはじめとする生成AIを使ったアプリケーションの開発は、あたかもユースケースのカンブリア爆発のような状況にあるといっても過言ではありません。
新しい技術そのものを生み出すことでは劣後しがちな日本。しかし、Google Trendsやsimilarwebによると、ChatGPTへの日本からのアクセスボリュームが大きいため、新しい技術をどのように使っていくかという点では日本人の関心、好奇心は高く、またそこに強みがあることがうかがえます。このエネルギーを生かせれば、アプリケーションレベルでは日本をはじめとする多くの企業に可能性が広がっているのではないでしょうか。
登場後の1年で大きく進化してきた生成AIですが、次年度もさらなる進化が期待できそうです。これを使いこなすためには私たちにはどのような能力やスキルが求められるのでしょうか? 次回の記事で考えていきたいと思います。
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