2024年、生成AIはどう進化する? 「カスタマイズ」「マルチモーダル化」から考える:前編(2/3 ページ)
ChatGPTの登場を発端に生成AIが一大トレンドとなったこの1年。ビジネスパーソンの仕事の仕方、仕事に対する考え方にも大きな影響をおよぼした。2023年生成AIを「ビジネス活用」の視点で振り返り、24年にはどう進化していくのかを予測した。
しかし、実際の利用率は……?
ただし、現在はまだ「誰もが生成AIを使っている」といえるフェーズではない。GMOインターネットグループが11月に実施した調査では、生成AIを「知っているが利用したことがない」と回答した人が47%を占め、利用したことのある人は16.6%にとどまった。
また、同調査の生成AIに対する信頼度についての質問では、利用経験者の57%が「非常に信頼する」「ある程度信頼する」と回答しているのに対して、利用経験のない人では23.8%にとどまっている。使わないと何ができるのか理解を深めることができず、結果的に信頼感も低くなるということなのだろうか。
「最新の情報をキャッチアップして積極的に活用する人」と「いままで通りの仕事のやり方を続ける人」の差が開き始めた年ともいえるかもしれない。
<注目キーワード1>カスタマイズ性の向上
では、生成AI普及時代2年目となる24年は、どのように進化していくのだろうか? 注目すべきキーワードは「カスタマイズ」と「マルチモーダル」だ。
Open AIは、ChatGPTのカスタムバージョン「GPTs」を11月にリリース。独自データをアップロードしてそれに基づいて回答させたり、回答の仕方を細かく指定したりといったことを容易にできるようになった。現時点では、作成したチャットを他のユーザーが利用できるようにする方法は共有リンクの発行に限られているが、今後は専用の「GPT Store」に作成したチャットを公開できるようになるという。
また、Microsoftも生成AIを使った独自のチャットボットを作成できる「Microsoft Copilot Studio」の提供を11月末に開始している。現在サポートされている言語は英語のみだが、日本語に対応するようになれば企業での活用が進みそうだ。
従来のChatGPTの場合、回答できる内容はモデルが学習している情報に限られ、回答方法もプロンプト内で指定するだけでは意図した通りに動かないことも少なくなかった。回答にWebの情報を反映できるようになったり、先述のCustom instructions機能が搭載されたりといったアップデートで自由度は上がってきたものの、まだまだ「特定の目的に最適化したAI」を作成するハードルは高い。
独自のデータを回答に反映でき、さらに回答のルールも柔軟に調整できる機能やツールの登場によってこれらの課題が解消し、自社情報に基づいて業務についての質問に答えるFAQチャットボットなどの目的特化型AIを作成しやすくなる。これは生成AI業務利用の大きな推進力となるだろう。
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